研究課題/領域番号 |
20K09219
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
川人 伸次 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (60284296)
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研究分担者 |
木下 浩之 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 徳島大学専門研究員 (70291490)
北畑 洋 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (60161486) [辞退]
高石 和美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (20325286)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / IL-17 / 血管内皮機能 / 周術期管理 / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
研究代表者らは細胞骨格Fアクチン構成制御がヒト血管平滑筋の酸化ストレスを軽減することを明らかにしたが、その機序が各種細胞骨格制御物質を介するかについては未検討である。一方、これら細胞骨格制御がヒト血管内皮機能を保護するかは未知である。本研究では、特殊な機能を持つヘルパーT細胞Th17サブセットで産生される炎症惹起性サイトカインIL-17がその活性化に引き続く各種内皮細胞内カスケードを細胞骨格制御で抑制し、ヒト腎動脈内皮機能維持可能かどうかを検討する。さらに、片腎摘出患者の術後腎機能障害の有無やその程度、患者予後を予測できるかを検証し、細胞骨格制御に着目した循環器系薬剤の創薬基盤や適切な周術期管理の示唆を得る。 本年度は、昨年度からの基礎研究を継続し、更に片腎摘出患者の術後腎機能障害や患者予後を予測できるかどうかを明らかにする臨床研究を開始した。ヒト摘出腎動脈(またはその初代培養内皮細胞)の細胞骨格F-アクチン構成、IL-17レベル、MAPキナーゼあるいは酸化ストレスのレベルが、片腎摘出患者の術後腎機能障害の有無やその程度、患者予後を予測できるかどうかを検討した。組織提供者の心血管合併症の病状やそれに関係した術前心エコーでの拡張障害の程度などの臨床データと上記の研究結果の相関を評価し、特に、本研究で着目した細胞骨格ターンオーバー調節物質リン酸化の程度、F-アクチン構成、内皮依存血管拡張反応と酸化ストレスの経時的変化に着目して比較検討した。採取した血小板分画あるいは血漿で、内皮機能の指標として細胞内サイクリックGMPレベル、酸化ストレスの指標としてイソプロスタン、炎症反応の指標としてIL-17を評価する研究にも着手し、現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、昨年度からのヒト腎動脈内皮機能でのF-アクチン調節物質の役割と高血圧、酸化ストレスとの関連を調べる研究、そして麻酔薬の修飾効果の検討、更に片腎摘出患者の術後腎機能障害や患者予後を予測できるかどうかを明らかにする臨床研究も終了する予定であった。しかし、本年度は新型コロナウイルス蔓延により、基礎研究の進行に若干の遅れが生じた。更に手術症例数の減少により片腎摘出患者の術後腎機能障害や患者予後を予測できるかどうかを明らかにする臨床研究にも支障が生じた。研究順序を変更し、行いうる最大限の努力で研究遂行に努めたが、すべての研究計画の終了には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、高血圧でのヒト腎動脈内皮機能とIL-17の関わりと麻酔薬の修飾効果の研究と、片腎摘出患者の術後腎機能障害や患者予後を予測できるかどうかを明らかにする臨床研究も全て終了させ、収集データの統計解析を進め、最終報告書の作成を進める予定である。 本研究で行うトランスレーショナルリサーチ、すなわち摘出腎動脈内皮機能におけるアクチン制御の変化と片腎での周術期腎機能の変化や患者予後の関係や、術前心血管合併症の種類、程度や治療薬の有無および麻酔薬選択を含む周術期管理と周術期急性腎障害発生頻度や程度の関連を検証した報告は見当たらない。本研究は、F-アクチン細胞骨格ダイナミズム制御によるヒト血管病態の機序や治療の可能性とそれについての麻酔薬の修飾作用をとらえ、摘出血管から患者予後を評価するという、基礎医学、循環器および腎臓内科学、麻酔・蘇生学をはじめとする外科学系全般など広い領域に股がる新しい治療戦略のための基礎から臨床までに至るトランスレーショナルな知見を構築し、周術期医学の発展に寄与するものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス蔓延の影響による基礎研究の遅延に加え、手術症例数の減少により臨床研究にも支障が生じた。研究に遅れが生じたため、研究順序を変更し、行いうる最大限の努力で研究遂行に努めたため次年度使用額が生じた。次年度使用予算は備品購入、実験動物・試薬類などの消耗品費と最終年度として研究成果発表のための旅費等に使用する予定である。
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