研究課題
本研究では、慢性疼痛および慢性掻痒におけるミクログリアの挙動とその病態生理学的意義に着目した。坐骨神経部分結紮による神経障害性疼痛モデルマウス、イミキモド処置による乾癬モデルマウスをそれぞれ作製して解析を行ったところ、脊髄後角ミクログリアの形態学的活性化ならびに各種炎症性因子の発現増加が認められた。化学遺伝学的手法(Gi-DREADD)によりCx3cr1陽性ミクログリアを抑制性に制御すると、神経障害性疼痛モデルにおける機械的アロディニアが減弱し、また乾癬モデルにおける引っ掻き行動も抑制された。これらの結果は、慢性疼痛および慢性掻痒のいずれにおいても、脊髄ミクログリアがその増悪に関与する可能性を示唆している。一方でGq-DREADDによりCx3cr1陽性ミクログリアを活性化させると、機械的アロディニアが惹起された。ミクログリアの枯渇薬であるPLX3397をマウスに与えると、神経障害性疼痛モデルならびにGq-DREADDによる機械的アロディニアが消失し、ミクログリアによる疼痛増悪機構の一端が明らかになった。ところがこの現象は雄マウスでのみ顕著に認められ、雌マウスではミクログリアの活性化とアロディニアとの関連性は示されなかった。雄マウスにおいて痛みと痒みの両者に関わるミクログリアの差別化を目的として、脊髄後角における各種遺伝子発現レベルを比較し、痛みと痒みの病態モデルそれぞれで特異的に発現増加する因子を同定した。これらの因子はいずれも活性化ミクログリアに発現することを確認しており、その詳細な機能解析によって侵害受容性体性感覚の分子基盤解明に繋がると考えられる。
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