研究課題/領域番号 |
20K09229
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研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
南嶋 しづか 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (20622088)
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研究分担者 |
南嶋 洋司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20593966)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低酸素応答 / 敗血症性心筋障害 / PHD阻害剤 / キヌレン酸 |
研究実績の概要 |
これまで「PHD阻害剤がLPS誘発性敗血症性ショックを改善するメカニズムには、炎症性サイトカイン抑制や抗炎症性サイトカイン産生増加が関係している」と多数報告されてきた。しかし我々の先行研究では、PHD阻害剤(FG-4592)によるLPS誘発性左室機能不全の改善には炎症性サイトカインの抑制は確認できず、キヌレン酸(KYNA)の増加が関与している可能性が示唆された。その詳細を明らかにすべく、我々はLPS 35 mg/kgを投与したLPS誘発性敗血症性ショックモデルを作製し、FG-4592 25 mg/kgをLPS投与4時間前と投与直後に計2回(50mg /kg)投与した群(FG群)と対照群でPHD阻害剤がトリプトファン代謝(キヌレニン経路)に及ぼす影響を検討した。KYNAとその前駆物質であるキヌレニン(KYN)の血漿濃度を測定したところ、LPS投与2時間後の血漿KYNA/KYN比はFG群で有意に高かった。キヌレニン経路ではKYNはkynurenine aminotransferases (KATs)によって不可逆的にKYNAに変換されることから、PHD阻害剤によるLPS誘発性敗血症性心筋障害の軽減にはKATsの活性化が関与していることが示唆された。 一方、心筋組織中のTNFa, IL-1b, IL-6, IL-10の産生量をreal-time RT-PCR法にて定量したところ、FG群と対照群に有意な差はなく、FG-4592 による炎症軽減効果は心筋組織でも認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究で確立したLPS誘発性敗血症性ショックモデルを用いることで、組織採取のための実験動物の使用を最小限に抑えながら計画通りに実験を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
kynurenine aminotransferases (KATs) には4種のアイソザイムが存在するが、肝臓や腎臓に多く発現しているKAT Ⅱの阻害剤であるPF-04859989またはBFF 122を用い、PHD阻害剤によるLPS誘発性敗血症性心筋障害の軽減とKATの関連を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行研究で確立したLPS誘発性敗血症性ショックモデルを用いることで組織採取のための実験動物の購入を最小限に抑え、消耗品などを適正な価格で入手できたため。当該助成金は今後の低酸素応答とトリプトファン代謝との関係を明らかにするために必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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