研究課題/領域番号 |
20K09234
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
東 俊晴 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 医師 (60284197)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自己血輸血 / 単球 / 凝固活性小胞 / マイクロパーティクル / 自己血輸血関連有害事象 |
研究実績の概要 |
本研究では自己血輸血関連有害事象のなかでも血栓塞栓症に着目し,その要因のひとつである単球由来の凝固活性亢進に関する実験的観察を継続している.単球は凝固活性小胞を発生するが,前年度まではアポトーシス小胞の発生制御を主たる観察指標としてきた.細胞にアポトーシスが発生すると細胞膜表面にリン脂質に属するホスファチジルセリンが発現する.そこでは血液凝固因子の酵素活性は著しく促進することから,アポトーシス小胞の表面は血栓発生の足場となる.単球が関与する血液凝固促進作用にはホスファチジルセリン表出の他に組織因子発現が知られている. フローサイトメトリーを利用した観察により,正常な単球の表面にはホスファチジルセリンも組織因子も発現していない事を確認した.単球を低温環境に置くなどのアポトーシス発生刺激を加えるとホスファチジルセリンを表出したアポトーシス小胞が発生するが,そこには組織因子は発現していなかった.一方,後者を発現した小胞はアポトーシス小胞とは独立した小胞であることが確認された.これらのことから単球由来凝固活性亢進の分子機構としてアポトーシス発生とは異なる組織因子発現小胞放出の機構が存在することが示唆された.実際,低温に曝露した単球を洗浄した後に細胞浮遊液を静置すると,組織因子を含んだ小胞が新たに発生することが確認された.この組織因子発生は低温曝露により,対照(体温環境の継続)と比較し増加していた.この所見は細胞浮遊液にカルシウムキレートを加えることやスーパーオキシドジスムターゼを加えることで抑制された. 上記の新たに得られた所見により,単球由来凝固活性亢進の分子機構が明らかになりつつつある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の主たる業務が感染症に特化した研究開発型医療センターの手術関連診療部門長であることから,2022年の新型コロナウイルス感染第7波ならびに第8波への対策にエフォートの多くを割かざるを得なかったため.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まで,主に単球の存在する温度環境とアポトーシスの関連について検討を加えてきたが,今年度に入り新たに着目した温度環境による組織因子活性の変化について観察を開始したことにより,新たな展望が得られている.これらの知見を取り入れて,自己血採血を行った場合の凝固活性変化の指標を見直し,前向き観察研究を開始する準備を進めている.
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