研究課題
2020年度~2022年度に頸動脈を遮断する頸動脈内膜剥離術(25名)および頸動脈バイパス手術をともなう胸部大動脈ステントグラフト内挿術(30名)を受ける患者を対象として、インドシアニングリーン(ICG)と近赤外線分光法を用いた局所脳血流測定(rCBF)を行い、吸入麻酔薬(セボフルランまたはデスフルラン)、静脈麻酔薬(プロポフォールまたはレミマゾラム)により頸動脈遮断中の脳血流が影響を受けるかを測定した。rCBFは、我々が開発したICGをトレーサとして静注後に周波数フィルターを用いて動脈血中のICGの濃度変化の曲線と、DDGアナライザー(日本光電社製)により測定したICGの最高血中濃度からFickの原理を用いて算出した。rCBFはNIRO-NXを用いて前頭葉に貼付したセンサーにより測定した。対象全体では頸動脈遮断中にはrCBFは51.3 から 39.9 ml/min/100 gに有意に減少したが非遮断側では有意ではないが55.2 から 62.0 ml/min/100 gと一過性の上昇を示した。また、静脈麻酔薬を用いた場合にはrCBFは55.1 から 32.7 ml/min/100 gへと有意に低下したが、吸入麻酔薬を用いた場合は、48.4 から53.4 ml/min/100 g となり有意な変化は認めなかった。本研究は実際の臨床で頸動脈遮断に対する麻酔薬の脳血流に対する影響を初めて検証した。頸動脈遮断を伴う手術の場合は、静脈麻酔薬は注意して用いる必要が示唆された。
すべて 2023 2022
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