周術期に発症しやすい脳梗塞は患者の生命予後に重大な影響を及ぼす。また、炎症は脳梗塞増悪の重要な因子であり、脳内に存在するToll like receptor4(TLR4)はその炎症を惹起する。我々は野生型マウスとTLR4ノックアウトマウスにプロポフォールを投与し、プロポフォールがTLR4経路抑制を通じて脳梗塞に保護的に作用することを示した。 本研究の目的はノックアウトマウス・免疫染色・リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いて、TLR4を通じたプロポフォールによる脳梗塞への保護作用の具体的なターゲット細胞、その際のTLR4下流経路を検証することである。脳梗塞発症の際、プロポフォールの投与により脳梗塞巣周辺で産生される炎症性サイトカインが低下するか検証した。RT-PCR装置を用いて比較検討した結果、コントロール群に比較して、プロポフォールを投与した野生型マウスにおいて炎症性サイトカインであるIL-6が有意に低下していること確認した。よって、野生型マウスにプロポフォールを投与すると脳梗塞に対して保護的に作用する機序として、炎症性サイトカイン低下の可能性が確認された。 また、脳梗塞巣への炎症性細胞の集簇はプロポフォール投与により減少するか確認するため、抗TLR4抗体・抗CD11b抗体を用いて免疫蛍光染色法を行った。コントロールマウスと比較して、プロポフォール投与マウスはペナンブラのTLR4発現ミクログリア数が有意に少ないことを確認した。 以上のことにより、プロポフォールはTLR4経路抑制を通じて脳梗塞に保護的に作用し、その過程には炎症性サイトカインの低下、ペナンブラのTLR4発現ミクログリア数の有意な減少を伴うことが認められた。
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