研究実績の概要 |
傍脊椎神経ブロックは片側の複数の肋間神経をブロックし、胸腹部大動脈瘤手術の開胸部痛対策となる。また傍脊椎神経ブロックは同時に片側の交感神経もブロックし、血管拡張作用により血流増加が期待出来る。この効果で脊髄やその周囲組織の血流増加が得られると胸腹部大動脈瘤手術の合併症である脊髄虚血が予防できる可能性が考えられた。 全身麻酔下の家兎を用いて超音波ガイド下に第8,10胸椎、第1,4腰椎の傍脊椎部にメチレンブルー溶液(1~2ml)を注入し、その後灌流固定を行い、メチレンブルー溶液の広がりから肋間神経や腰神経への到達性と適量化を評価した(n=3)。この結果と皮切部(第9肋間神経~第2腰神経領域)の関係から、第8胸椎部に1ml、第10胸椎部と第1腰椎部に1.5ml注入することを決定した。 全身麻酔下に家兎の第5/6腰椎間から脊髄血流測定用グラスファイバープローベを挿入し、傍脊椎神経ブロックに伴う脊髄血流の変化を測定した。2%リドカインを第8胸椎部に1ml、第10胸椎部と第1腰椎部に1.5ml注入し、注入直後、注入5分後、注入10分後、注入30分後の脊髄血流を測定した。この間の血圧は大きな変化なく、吸入麻酔薬の微調整で一定に維持された。脊髄血流の増加は認められなかった(n=6)。 傍脊椎神経ブロックによる脊髄虚血保護効果を検討した。局所麻酔薬は0.25%レボブピバカインを使用し、対照群は生理食塩水を注入した。全身麻酔下の家兎を用いて脊髄血流測定下に傍脊椎神経ブロック(注入部位・量は前述同様)を行い、左側腹部を切開し大動脈を露出させ、腎動脈下腹部大動脈にクリップをかけ血流を遮断し、15分後に再灌流した。その後閉創し、全身麻酔から覚醒させ、7日間観察した。術後7日目の後肢運動機能(5段階評価:0 完全麻痺~4 正常)は、局麻群(0:3羽、2:1羽)、生食群(0:4羽)で、差を認めなかった。
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