研究課題/領域番号 |
20K09247
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
原 哲也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (50304952)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アドレナリンβ受容体 / カテコラミン / β遮断薬 / ホスホジエステラーゼ阻害薬 / 心室圧容積曲線 |
研究実績の概要 |
重症患者の急性期循環管理においては、適切な循環を維持するためにカテコラミンを用いた薬理学的循環補助を行うが、心筋のアドレナリンβ受容体への刺激は、心拍出量低下を招く重症不整脈や致死性不整脈を誘発することが問題となる。頻脈性不整脈にはジギタリス、カルシウム拮抗薬およびβ遮断薬等が用いられるが、効果発現までの時間や同時に発現する陰性変力作用により、期待する効果を得がたい場合がある。本研究はブタおよびラットの生体モデルを用いて、β1受容体選択性の異なる3種のβ遮断薬が、カテコラミンによる心機能の増強に与える影響を心室圧容積曲線で評価するとともに、刺激性および抑制性G蛋白を介したβ2受容体刺激によるシグナル伝達を評価することで、薬理学的循環補助における心筋アドレナリンβ2受容体の役割を解明することを目的とする。 令和2年度はβ受容体の選択性がカテコラミン投与下の心機能に与える影響を検討した。ブタの生体モデルを用いて、左室の収縮能と機械効率をβ遮断薬の用量を変えて評価した。アドレナリンの持続静脈内投与により頻脈とした状態に、各β遮断薬を投与して心拍数を50~60/minに調節し、各計測値を記録した。プロプラノロールおよびエスモロールは用量依存性に左室収縮能・機械効率を抑制する傾向にあったが、ランジオロールにおける左室収縮能・機械効率の抑制はプロプラノロールおよびエスモロールよりも弱い傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験1として、β受容体の選択性がカテコラミン投与下の心機能に与える影響を、ブタの生体モデルを用いて検討した。実験群①をプロプラノロール群、実験群②をエスモロール群、実験群③をランジオロール群として、試薬の用量を変えて評価した。 各群で6頭の検討にとどまっており、統計学的検討が不十分な状況であるが、大まかな傾向は得られており、ほぼ予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
実験動物の数を増やして実験1を完遂する。引き続き実験2として、β受容体の選択性がPDEI投与時の心機能に与える影響を、ミルリノンを用いて検討する。さらに、実験3として、β受容体の選択性が細胞内シグナル伝達に与える影響を、心筋におけるPKAおよびAktの活性で評価する。 研究の進捗が芳しくない場合には、実験2および実験3をランジオロール群から先に検討し、ランジオロールの特性を中心に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験動物数が計画よりも少なかったため、物品費に残金が発生した。この残金は次年度に本年度に遂行すべきであった実験を完遂するための研究費として必要で、実験1の完遂に必要な動物および試薬の購入に充てる予定である。
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