研究課題/領域番号 |
20K09252
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西和田 忠 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20649165)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グリコカリクス / HepG2 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
高侵襲手術の周術期管理や重症症例に対する集中治療管理において、しばしば血管透過性亢進や凝固障害が発生し、近年この病態に血管内皮・内皮上のグリコカリクスの傷害が関与していることが示唆されている。今回の研究では、麻酔科関連薬剤の暴露が血管内皮細胞・内皮上のグリコカリクスにどのような影響を与えるかついてメカニズムも含めて検討するとともに、保護物質についても検討する予定であった。 しかし、ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)の発育が悪く研究がうまく進まないため、癌細胞を用いた検討に切り替えた。 癌細胞に存在するグリコカリクスが癌細胞の増殖、浸潤、遊走、転移に大きく関与している可能性が注目されていることから、麻酔薬によって癌細胞のグリコカリクスに与える影響が異なり、延いては再発や転移発生頻度の差につながるという仮説を立てた。今回の研究では、各種麻酔薬の曝露が癌細胞のグリコカリクスにどのような影響を与えるかについて検討する。 特にグリコカリクスが発育に関与していると報告されている肝細胞癌細胞株HepG2を用いてセボフルランによる影響を検討した。まずMTT assayを用いてviabilityを測定したところ、セボフルラン2% 6時間暴露はコントロール群と比較して有意に48時間後のHepG2のviabilityを低下させた。次にLDH assayを用いて細胞傷害性を検討したところ、sevo2%暴露が有意に48時間後の細胞傷害性を増加させた。またAgrin産生をELISAで計測したところ、有意にAgrinの産生が低下していた。 さらにウェスタンブロットによりAgrin発現の測定を行おうと予備実験を行ったが、実験に値するバンドが検出できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HUVECの発育がうまくいかなかったために癌細胞を用いた検討に移行したことから、やや遅れが生じた。 また、COVID-19重症患者診療を余儀なくされ、当初の計画通りには本研究にエフォートを割くことが困難であった。 癌細胞(HepG2)に切り替えてからは、ある程度の研究結果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
Agrinの検出についてELISAとは異なる方法を検討して計測するとともに、セボフルランによるHepG2の細胞増殖についてもBrdUの取り込みや、コロニー形成法等を用いて検討する。HepG2は集簇傾向を示すためにflow cytometryによる検討は若干困難な可能性があるが、可能であれば検討する。 また、セボフルランだけでなく他の麻酔関連薬剤(オピオイドやプロポフォール等)を用いて同様の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究途中で癌細胞を用いた研究に切り替えたことから予測していたよりも使用する額が少なかった。またCOVID-19診療のために研究に遅れが生じたことも大きな理由である。次年度から比較的高額(BrdU ELISA Kitやflow cytometry関連)な試薬を用いた研究を行なうために使用する。
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