がんにおける体動時痛の末梢機序を明らかにし、とそれに基づく新たな痛みの治療のターゲットを提示すること目的として研究をおこなった。がんの痛みにおけるTmem45bの役割を明らかにするために、申請者の教室で開発した足底がん移植モデル用いて以下の研究を行なった。足底がん移植モデルはマウスの左足底にLewis Lung Carcinomaを移植し、作成する。対照マウスにはLLCの培養液のみ注入する。これまでに、本がん疼痛モデルでは、疼痛関連行動は、腫瘍移植2週目から明らかとなり、経時的に増強し、腫瘍は移植2週目から急激に増大することが明らかとなった。さらに、Tmem45bの関与を明らかにするためTmem45b遺伝子欠損マウス(KOマウス)と野生型マウス(WTマウス)で比較した。その結果、KOマウスの腫瘍増殖経時変化はWTマウスと変わらなかった。Tmem45bは担がん状態で末梢神経での発現は変化しないことが明らかとなった。さらに、免疫染色により後根神経節でのTmem45bの局在変化を検討したが、Tmem45bとCGRP(ペプチド含有無髄神経)、IB4(ペプチド非含有無髄神経)、NF200(有髄神経)との共存率に変化はなかった。さらに、脊髄後角細胞の細胞外電位測定を行なったが、KOマウスとWTマウスで反応に差はなかった。行動解析では、KOマウスで機械性痛覚過敏は減弱したが、自発痛関連行動はWTマウスと差はなかった。以上により、Tmem45bはがんによる機械性痛覚過敏に関与するが自発痛には関与せず、また、がんの増殖には関与しないことが明らかとなった。
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