研究課題/領域番号 |
20K09254
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
駒切 洋 岩手医科大学, 医学部, 助教 (80405753)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 後根神経節 / 過分極活性化電流 / HCNチャネル / 硫化水素 / 一酸化窒素 / 神経因性疼痛 |
研究実績の概要 |
【硫化水素によるHCNチャネル活性化機構の解明】 これまでに、成ラットから分離培養した後根神経節細胞を用いた電気生理学実験により硫化水素ドナーが過分極活性化陽イオンチャネル(HCNチャネル)電流(Ih)の活性化の電位依存性を約10 mV正の方向にシフトさせることを見出した。また、この作用がアデニル酸シクラーゼの阻害剤には影響を受けず、グアニル酸シクラーゼの阻害剤によって有意に抑制されることを確認した。そこで、この硫化水素ドナーによるHCNチャネル活性化のメカニズムをさらに詳細に検証した。一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NMMAを前処置すると、硫化水素ドナーによるIhの電位依存性のシフトは有意に抑制された。また一酸化窒素のスカベンジャーであるC-PTIO前処置では硫化水素ドナーの効果は完全に消失した。さらに、硫化水素ドナーの添加が後根神経節細胞内での一酸化窒素産生に影響を与えるかどうかを一酸化窒素検出蛍光プローブであるDAF-2を用いた蛍光イメージングにより調べたところ、硫化水素ドナーの添加によって後根神経節細胞内の一酸化窒素産生量が大きく増強されることが確認できた。一連の実験によって、後根神経節細胞において硫化水素が一酸化窒素合成酵素を介した一酸化窒素産生を増強し、グアニル酸シクラーゼを介したサイクリックヌクレオチド産生を介してHCNチャネルの活性化を引き起こすという新たなチャネル活性化機構が明らかとなった。電流固定下での膜電位測定において、硫化水素ドナーが過分極刺激後の神経細胞の興奮性を上昇させる知見も得られており、硫化水素が後根神経節細胞の興奮性をHCNチャネルの活性化を介して調節している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度内に行った実験によって硫化水素と一酸化窒素の連関によるHCNチャネル活性化機構という新知見を示すデータが得られたが成果発表 (査読論文)が間に合わなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
論文の投稿と追加実験のため期間延長の申請を行った。
|
次年度使用額が生じた理由 |
成果発表 (査読論文)に遅れが生じたため期間延長申請を行った。次年度使用額は論文査読に伴う追加実験に使用する。
|