研究課題
【硫化水素によるHCNチャネル活性化とそのメカニズムの解明】成ラットから分離培養した後根神経節細胞を用いた電気生理学実験により硫化水素ドナーが過分極活性化陽イオンチャネル(HCNチャネル)電流(Ih) の活性化の電位依存性を約10 mV正の方向にシフトさせることを見出した。この作用はアデニル酸シクラーゼの阻害剤には影響を受けず、グアニル酸シクラーゼの阻害剤によって有意に抑制された。さらに、この硫化水素ドナーの効果は一酸化窒素合成酵素阻害剤 (L-NMMA)および一酸化窒素のスカベンジャー (C-PTIO)によって有意に抑制された。加えて、硫化水素ドナーの添加が後根神経節細胞内の一酸化窒素産生量を大きく増強させることが蛍光色素(DAF-2)を用いた蛍光イメージングによって明らかとなった。一連の実験から、後根神経節細胞において硫化水素が一酸化窒素合成酵素を介した一酸化窒素産生を増強し、グアニル酸シクラーゼによるサイクリックヌクレオチド産生を介してHCNチャネルの活性化を引き起こすという新たなチャネル活性化機構が明らかとなった。また電流固定下での膜電位測定において、硫化水素ドナーは過分極刺激時に見られるHCNチャネル活性化による膜電位の回復相 (voltage-sag)の増強を引き起こすことも確認できた (voltage-sagの増強は活動電位の発火頻度増加に寄与する)。本研究によって硫化水素が後根神経節細胞の興奮性を一酸化窒素産生増強によるHCN チャネル活性化を介して調節している可能性が示唆された。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 699 ページ: 149562~149562
10.1016/j.bbrc.2024.149562