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2020 年度 実施状況報告書

麻酔中の脳波による鎮痛モニタリング法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K09257
研究機関関西医科大学

研究代表者

萩平 哲  関西医科大学, 医学部, 教授 (90243229)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード脳波バイコヒーレンス / 侵害入力 / 麻酔
研究実績の概要

現在では脳波モニターが普及し,麻酔中の鎮静度に関してはある程度まで評価できるようになっている.しかしながら麻酔の3つの要素のうち鎮痛度だけは客観的な指標によって評価することが困難な状況である.これまでは自律神経系の応答の程度から間接的に鎮痛度を推測していたが,この方法では様々な要因によって適切に判断できない状況が存在する.侵害入力の有無を適切に評価するためにはやはり脳を直接モニタリングする必要がある.
さて,脳波バイスペクトル解析で得られる脳波バイコヒーレンスは脳波のうちの2つの周波数間の非線形的相互作用の程度を示すパラメータである.揮発性麻酔薬やプロポフォール麻酔中には2つの周波数で作られる平面上の対角線付近の4Hz前後および10Hz前後に2つのピークが出現する.先の研究では執刀前後での脳波バイコヒーレンスの変化とオピオイド投与による変化から脳波バイコヒーレンスの2つのピーク高が鎮痛効果の指標になることが示されていた.そこで,この2つのピーク高が手術中の鎮痛効果の指標になるかどうかを検討することを目的とした.
令和2年度は,手術中に脳波バイコヒーレンスのピーク高が規定の減少を示した時に鎮痛薬を追加投与し,その前後での脳波バイコヒーレンスのピーク高の変化を観察する研究を計画した.学内の倫理委員会の承認を得て研究を開始している.50例症例について研究を行う予定で,現在のところ7例のデータを取得している.これまでのデータでは,概ね予想通りの結果が得られている.症例が集積された段階で,詳細な解析結果が示されると考えている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

データ収集のための環境構築は完了し,すでに倫理委員会の承認を得てデータ収集を開始しており,順調にデータ収集が進んでいるところである.
また,次の段階の準備も進んでおり,全体として概ね順調に進んでいると言える.

今後の研究の推進方策

次年度は,現在進めているデータ取得を継続して行い出来るだけ早いうちにデータ収集を終了し,解析を行うことを目標としている.
脳波バイコヒーレンスは本来,脳波の振幅に依存しないように規定化されているが,現在の計算方法ではいくらか振幅の影響を受けている.そこで,振幅の影響を全く受けない修正脳バイコヒーレンスというパラメータを算出する方法を考案している.データ解析時にはこの修正脳波バイコヒーレンスに関しても比較検討する予定である.
また,本年度からは小児や若年者での検討を開始する.小児の脳波は成人とは異なる.2才以降成人に至るまで麻酔薬による脳波変化のパターンは共通しているが,小児の麻酔中の脳波は成人のそれに比し振幅が2倍程度まで大きく,また基本周波数は成人より速い.これまでの観察では成人と同様に脳波バイコヒーレンスのピーク高は侵害入力により減少し,鎮痛薬を追加投与することで再び高くなることが捉えられている.同時に小児では脳波の振幅が侵害入力により減少し,鎮痛薬の追加投与で再び増大することも捉えられている.従って小児では脳波バイコヒーレンスと共に脳波の振幅にも着目して研究を進める予定である.なお,これまでの経験で小児では麻酔維持のレベルで脳波バイコヒーレンスのピーク高はほぼ全例で優位となる程度まで大きくなるため,必要症例数は成人に比べ少なくて済むと考えている.適切な症例数を設定して研究に臨む予定である.
一方で,成人においては,侵害入力がない状態でも脳波バイコヒーレンスに有意なピークが認められない患者も存在する.そのような患者についての脳波による侵害入力の有無の検出方法についても検討していく予定である.

次年度使用額が生じた理由

COVID-19パンデミックのために学会出張が無くなったことが理由で旅費での執行を行わなかったことがおもな原因であり,事態が収集して学会出張に行けるようになったところで再調整して使用する予定である.

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公開日: 2021-12-27  

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