研究課題
モルヒネ等のオピオイド物質は強力な鎮痛薬としても広く利用されている。但し、その鎮痛作用には個人差が大きいことがよく知られており、そのことが効果的な疼痛治療の妨げとなっている。オピオイド系鎮痛薬の個人差には、環境要因以外に遺伝要因も寄与すると考えられるが、実際のがん患者において投与されているオピオイドの量と種類による鎮痛効果や副作用の個人差に対しては未だ網羅的な遺伝子要因の探索研究は行われておらず、詳細については未解明の部分も多い。そこで、本研究は、がん患者における疼痛治療の効果及び副作用に関わる遺伝子多型の分布の関連を網羅的に調査し、疼痛治療の効果及び副作用のリスクマーカーとしての有用性を検討することを目的とする。当該年度においては、対象サンプルの収集に加えて、網羅的遺伝子多型判定及び品質評価を行った。サンプル収集に関しては、研究代表者の所属研究室で以前より収集されていた、オピオイド鎮痛薬の投与なども伴うがん患者のサンプルが引き続き収集され、当該年度末までに合計429程度となった。また、患者検体DNAサンプルの一部の233程度のサンプルに対して、Infinium Asian Screening Array-24 Kit(イルミナ社)の高密度アレイを用いた網羅的遺伝子多型判定を行ったところ、Call rateは2サンプルを除き0.95以上(5サンプルを除き0.98以上)となり、高率で実験が問題無く進行した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の研究において、サンプル収集に加えて、網羅的遺伝子多型判定及び品質評価がほぼ予定通りに進行したため。
今後は、当該年度までの研究において行っていた網羅的遺伝子多型判定及び品質評価を引き続き行う。また、纏まった遺伝子多型データが揃い次第、網羅的な関連解析を行う。臨床データとの網羅的な関連解析においては、可能であればサンプルセットを2分割し、探索用、検証用として用いて、再現性を確認し、偽陽性を防ぐ。関連解析において有意な関連が見出された多型に関しては、それが含まれる連鎖不平衡ブロックにおける他の多型などに関しても必要に応じてさらにジェノタイピングを行い、最有力候補多型(最もcausativeと考えられる多型)を同定する。また、必要に応じてImputation法などにより解析用多型データを補完し、より詳細な解析を行う。
(理由)基本的には当初の研究期間内に全額を使用すべく計画的に執行したが、年度末近くになっても実験が引き続いており、本年度達成できなかった実験及び解析を次年度に行うこととなった。(使用計画)物品費(実験用試薬及びプラスチック製品等)、旅費(研究成果発表目的の国内外旅費及び研究打合せ目的の出張費等)、その他(論文校閲費・投稿料・別刷費等研究成果発表費用)に対して使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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