研究課題
当該年度においては、前年度に引き続き、対象サンプルの解析を行った。患者の血液よりDNAを抽出し、Illumina社製 Infinium Asian Screening Array-24のチップを使用して全ゲノム領域の65万箇所以上の遺伝子多型を対象としてジェノタイピングを行い、慢性的にオピオイドを投与を受けたがん性疼痛患者を対象として、オピオイドの主要な副作用である嘔気や便秘等との関連をGWASにより解析した。GWASの結果、ゲノムワイド有意な関連を示す遺伝子多型は認められなかったが、TMEM132C遺伝子のイントロン領域に位置するrs7296262多型が嘔気発生有無に関してRecessiveモデルにおける上位20以内の候補多型として同定され、CC遺伝型保有者では非保有者と比較して嘔気発生が高頻度であった。また、この多型に関して、他の急性的にオピオイド投与を受けた全身麻酔患者症例において検証用の追加解析を行ったところ、有意な関連が認められたが、CC遺伝型保有者では非保有者と比較して嘔気発生が低頻度であり、関連の方向性が逆転していた。TMEM132C遺伝子は膜タンパク質をコードする遺伝子であるとされているが、嘔気発生及びオピオイドの作用機序への寄与は明らかになっていない。本結果はrs7296262の多型が嘔気発生有無を予測するマーカーとして役立ち得ることを示している。我々の発見は満足の行く副作用治療を達成するために有益な情報を提供することになり、個別化医療への新しい道を拓くことになるだろう。
3: やや遅れている
基本的には当初の研究期間内に研究を完了すべく計画的に執行したが、年度末近くになっても遺伝子多型と表現型との関連解析が引き続いており、本年度達成できなかった追加genotyping実験及び解析を次年度に行うこととなったため、研究期間の延長を行った。
今後は、当該年度までの研究において行っていた関連解析を引き続き行う一方、rs7296262多型のみならず、有力な候補遺伝子多型に関しては、他種のサンプルを用いての追加解析を行う。臨床データとの網羅的な関連解析においては、オピオイド投与量及び嘔気や便秘等の副作用の表現型以外に、当該がん患者における疼痛の有無についても解析対象とする。また、関連解析において有意な関連が見出された多型に関しては、それが含まれる連鎖不平衡ブロックにおける他の多型などに関しても必要に応じてさらにジェノタイピングを行い、最有力候補多型(最もcausativeと考えられる多型)を同定する。また、必要に応じてImputation法などにより解析用多型データを補完し、より詳細な解析を行う。
基本的には当初の研究期間内に研究を完了すべく計画的に執行したが、年度末近くになっても遺伝子多型と表現型との関連解析が引き続いており、本年度達成できなかった追加genotyping実験及び解析を次年度に行うこととなったため、研究期間の延長を行い、次年度使用額が生じることとなった。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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