研究実績の概要 |
頭部外傷(TBI)後二次性敗血症において生じている好中球、単球をはじめとする自然免疫細胞のマーカー発現変化を解析すべく前年度に実施したCyTOFの結果を用いてOMIQ上で多次元解析を行った。Sham損傷後敗血症において主要なクラスターであるCD68+の好中球はTBI後敗血症ではCD14高発現、Ly6C, SIRPα and Ki67が低発現の好中球に変化することが確認された。またTBI後敗血症においてはCD68、CD14、TLR4が低発現の好中球が主要なクラスターを形成することが明らかとなった。また、PD1、CD14が高発現の単球がTBI後敗血症で減少し、CD206高発現の単球が増加することなどが明らかになった。 病理学的評価では、脾臓内のマクロファージがTBI後敗血症で著明に増加していた。また、sham損傷後敗血症で生じていた肝の類洞拡張および肺毛細血管のうっ血はTBI後敗血症では確認されなかった。これらの結果はTBI後敗血症でのより強い免疫の活性化が感染症を抑制し、肝・肺の臓器障害軽減につながったと推察される。 前年度までに明らかにした、①生存率:TBI 87% vs. sham 67%とTBI群の方が生存率が高かった、②腹水中生菌数はTBI群ではsham群と比較して有意に低値であった、③LUMINEXによるサイトカイン測定結果(TBI群では、IL-6、TNFalpha、IL-17に代表される炎症性サイトカインが有意に高値である一方、IL-4、IL-10などの抗炎症性サイトカインは両群間に有意な差は認められなかった。また、TBI群ではT細胞非依存性INF gamma誘導に重要な役割を果たすIL-12P70が高値であり、実際にINF gammaの高値も確認された)、の結果を併せ、頭部外傷が感染症に対して有利に働く自然免疫細胞の機能変容機序の一端が明らかとなった。
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