研究課題/領域番号 |
20K09271
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
杉山 育美 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (80509050)
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研究分担者 |
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50721974)
佐塚 泰之 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (90162403)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 解毒治療 / 脂肪乳剤 / ILE / over dose / 救急 |
研究実績の概要 |
本研究は薬物のOver Doseにより中毒症状を引き起こした患者に対して、医師の経験に基づき解毒処置に用いられる静注用脂肪乳剤 (ILE)の作用機序を明らかにし、より効率的に治療を実施するためのエビデンスを示すことを目的としている。4種類の薬物を選択し薬物とILEとの結合能を透析法にて評価した結果、アミトリプチリン(Ami)とILEの結合能が最も高く、ILEの濃度依存的に結合能が増大することが明らかとなった。タンパク結合率が約95%であるAmiであるが、血漿タンパク質存在下においてもILEの濃度依存的に結合率が増大した。 次にC57BL/6マウスにAmiを腹腔内投与、その10分後にILEを尾静脈内投与しAmiの体内挙動を評価した。血中Ami濃度はILEを投与した直後に増大した一方、肝臓および脾臓中のAmiレベルは速やかに減少した。このことより、肝臓や脾臓に分布したAmiがILEの投与により血中へ移行したことが示唆された。さらに、いずれの組織においてもAmiは経時的に減少したが、ILE併用により脾臓ではレベルの増減が経時的に認められ、心臓および肝臓では一定時間、減少することなく一定のレベルを維持していた。すなわち、Amiは濃度勾配により血液と組織間で分布を繰り返している可能性が考えられた。以上の結果より、Amiの過剰投与により血中に存在するフリー体は、投与されたILEに一時的に捕捉されることにより減少、それに伴い濃度勾配により組織から血中へAmiが移行するというやりとりが経時的に起こり、その間に代謝・排泄が進行し解毒効果を発揮するものと考えられた。さらに詳細な検討の必要があるが、ILE投与による解毒効果は薬物の代謝・排泄を促すものではなく、ILEの薬物保持能により間接的に血中もしくは組織中のフリー体を低下させることによることが示唆された。
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