研究実績の概要 |
Histon/NETsと外傷に関するデータベースを作成し解析に取りかかった。外傷と一次性外傷性凝固障害である播種性血管内凝固症候群(DIC)の解析を行った。前向きに収集した外傷症例295症例データベースを使用して、外傷急性期に発症する線溶亢進型DICが多臓器機能障害(MODS)発症の予測因子であり、MODS発症から症例の転帰を不良とする、との仮説を検討した。DIC症例のMODS発症率(57.6% vs. 42.4%, p=0.021)と大量輸血率(18.6% vs. 5.3, p<0.001)は非DIC症例に比較して高率であり、病院死亡率も高い(20.2% vs, 3.2%, p<0.001)。その結果DIC症例の生存確率は低く(Log Rank, p<0.001)、搬入直後(0H)と3時間後(3H)のDIC発症は、外傷症例の病院死亡、24時間以内の大量輸血、そしてMODS発症を予測可能である事をreceiver operating characteristic (ROC) curve解析に基づくarea under ROC curve (AUC)により証明した。AUCは、病院死亡(0H 0.771, p<0.001; 3H 0.808, p<0.001)、大量輸血(0H 0.714, p<0.001; 3H 0.857, p<0.001)、MODS (0H 0.650, p=0.001; 3H 0.686, p<0.001)である。さらに線溶亢進型DICの基本病態生理を構成する、トロンビン産生およびプラスミン産生もDIC症例の病院死亡を良い感度・特異度で予測可能であった。本研究は外傷性凝固障害でHistone/NETsが重要な役割を果たすDICの重要性を証明した事に意義がある。Scientific Report 2021; 11:11031(公表)。
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