研究課題/領域番号 |
20K09284
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
土井 研人 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80505892)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 敗血症 |
研究実績の概要 |
敗血症性ショックにおいて、強い血管収縮作用を有するアンジオテンシンIIは、敗血症による血管拡張性ショックの改善効果が期待でき、加えて腎糸球体輸出細動脈の収縮作用が糸球体濾過を増加させる。一方、アンジオテンシンIIは腎糸球体高血圧状態を誘導するため、長期にわたる投与では糸球体硬化を惹起しうる。また、実験動物モデルでは、アンジオテンシンII持続投与により、腎間質炎症細胞浸潤と線維化進展、心筋肥大・線維化という臓器障害をもたらすことが知られている。 本研究では、アンジオテンシンIIによる敗血症による血管拡張性ショックからの離脱と心臓及び腎臓における臓器障害という益と害のどちらが大きいかを評価することが目的であった。まず、敗血症性ショックにおけるアンジオテンシンIIによるショック離脱効果を検証した。具体的には、十分な血圧上昇をきたす用量設定を下アンジオテンシンIIを盲腸結紮穿刺腹膜炎モデルによる敗血症性ショックマウスに投与したが、生存をアウトカムとした解析において予後改善効果を認めなかった。アンギオテンシンIIの用量調節に加えて、投与タイミング(敗血症を惹起する1週間前からの投与、48時間前からの投与、等)についても検討を加えたが、アンジオテンシンIIの治療効果については確認できなかった。慢性腎臓病あるいは慢性心不全をあらかじめマウスに導入し、次いで急性期病態である敗血症を惹起する、いわゆる2ヒットモデルに対しても治療効果があるか検証したが、同様に効果が確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
想定していた敗血症に対するアンギオテンシンIIの保護作用がマウス腹膜炎モデルでは確認できず、アンギオテンシンIIの用量調節や投与タイミング、慢性疾患の合併など、様々な条件設定を行ったため時間を要した。また、本研究開始時には、新型コロナウイルス感染症の影響により大学内での実験の制限があり、実験を行うにあたり時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症に対するアンジオテンシンIIの効果を、盲腸結紮穿刺腹膜炎モデル以外のもの、エンドトキシン投与モデルや大腸菌腹腔内投与モデルなどでも検討する。また、敗血症モデルののみならず、虚血再灌流障害やシスプラチン腎症といった非敗血症性急性腎障害モデルでのアンジオテンシンII投与による腎障害進展の影響について、腎病理組織と腎組織における遺伝子発現解析を行い詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究開始当初においては、新型コロナウイルス感染症の影響で大学における実験に制限があった。また、旅費として計上していた学会参加費用がウェブ開催で大幅に減少した。動物実験を再開しており、次年度に使用する予定である。
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