研究課題/領域番号 |
20K09293
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中平 毅一 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (80844414)
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研究分担者 |
趙 晶 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60804466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 敗血症 / ヘテロプラスミー / ミトコンドリア融合 / インフラマソーム / マクロファージ |
研究実績の概要 |
感染症により重篤な臓器障害を呈する敗血症は、集中治療室における主要死亡原因の一つで、その病態の解明と治療法の開発は急務である。本研究では、インフラマソーム依存性敗血症におけるへテロプラスミーの役割を解明すると共に、ヘテロプラスミーの制御因子同定と機序解明を目的とする。ヘテロプラスミーを制御する因子および機序を同定することは、敗血症のみならずmtDNA変異が関与する多くの難治性疾患の新たな治療標的の発見につながる可能性もあり重要性の高いものである。上記目的のもと、本研究は以下の3つの研究より成り立っている。計画1.mtDNA変異の蓄積が敗血症モデル(マウスおよび細胞)に及ぼす影響を検討。計画2.ミトコンドリア融合がヘテロプラスミーおよび敗血症モデルに及ぼす影響を検討。計画3.MFN1により制御される遺伝子の同定と、それらのヘテロプラスミーへの影響を検討。
令和2年度の研究成果は以下の通りである。①ヘテロプラスミー蓄積モデルであるPOLG マウスの初代培養マクロファージにおいて、mtDNA変異数の増加及び、インフラマソーム活性の増大を認めた。②また、Cre/loxpシステムによる骨髄系細胞特異的MFN1ノックアウトマウス(Mfn1KO)およびコントロールマウス (Mfn1WT) より抽出した初代培養マクロファージにおいて、Mfn1KO細胞においてヘテロプラスミーの蓄積の増加および、インフラマソーム活性の増大を認めた。③さらに敗血症モデルを用いた動物実験ではMfn1KOマウスの生存率の有意な低下を認めた。④MFN1によるヘテロプラスミーの制御機序を分子レベルで解明するための網羅的遺伝子解析の計画においては、マウスDNAサンプルの抽出および保存を終了した。これらの結果①~③は、我々の仮説に沿うものであり、本研究の継続の重要性を示すものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3つのメイン研究計画より成り立っており、各メイン計画はさらに2つのサブ計画に分かれている。研究開始から1年たった現在までの進捗状況は、計画1の①②(ヘテロプラスミーモデルとして使用されるPOLG マウスのマウスモデルおよび培養細胞を用いいた解析)を予定していた実験の約30%を終了し、計画2の①②(MFN1がヘテロプラスミー蓄積、インフラマソーム、敗血症に及ぼす役割をin vivo 及び in vitro モデルを用いて検討)に関しては約60%を終了している。計画3の①(Mfn1WTとKO細胞をマイクロアレイにより網羅的に解析)に関してはサンプルの収集保存を含め約30%終了している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、マウスの繁殖状況に注意を払いつつ(POLGマウスラインにおける変異型の繁殖が、他のマウスラインに比べ不安定である)、必要に応じて繁殖ケージの増強などの対応を行いつつ、引き続き本研究計画を速やかにかつ慎重に進めていく予定である。
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