本研究では、インフラマソーム依存性敗血症におけるへテロプラスミーの役割を解明すると共に、ヘテロプラスミーの制御因子同定と機序解明を目的とする。ヘテロプラスミーを制御する因子および機序を同定することは、敗血症のみならずmtDNA変異が関与する多くの難治性疾患の新たな治療標的の発見につながる可能性もあり重要性の高いものである。 令和4年度の主な研究成果は以下の通りである。① マクロファージ細胞におけるミトコンドリアネットワークの解析のため、共焦点レーザー顕微鏡を使用したLive cell image analysisを行った。MFN1ノックアウト(Mfn1 KO)細胞においては、コントロール(Mfn1 WT)細胞に比してミトコンドリアの著明な断片化をみとめ、ミトコンドリアのネットワーク構成が認められなかった。その一方、mtDNA変異蓄積細胞とそのコントロール細胞においては明らかなミトコンドリアネットワークの違いが認められなかった。② MFN1による敗血症の制御機序を分子レベルで解明するための網羅的遺伝子解析をRNAシークエンスによって分析を行った。Mfn1KO細胞は対照群に対してRegulation of immune response 経路の上昇を認めた。この結果は、Mfn1KO細胞においてIL-1βの細胞外放出が増大した我々のデータと一致する。③ MFN1がmtDNA変異蓄積の制御作用を示した一方、mtDNA copy数への影響は、デジタルPCRの結果では認められなかった。④ Mfn1をshRNAによってgene silencingさせたJ774A.1 cell lineにおいてもノックアウト細胞の結果同様、細菌毒素による刺激でIL-1βの放出の増大を認めた。 現在、学術誌投稿に向けて論文作成を行っている段階である。
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