研究課題/領域番号 |
20K09295
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
末吉 孝一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90648297)
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研究分担者 |
田中 裕 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (90252676)
岡本 健 順天堂大学, 医学部, 教授 (40347076)
近藤 豊 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90642091)
平野 洋平 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70621895)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アデノシン三リン酸 / 免役抑制 / 単球 / T細胞 |
研究実績の概要 |
現時点で敗血症患者16名の血液検体を用い、PBMC(末梢血単核細胞)を抽出し単球、CD4陽性T細胞、およびCD8陽性T細胞の細胞膜表面のATP濃度を健常人と比較した。細胞膜表面ATP濃度はいずれの細胞においても有意に上昇していた。またミトコンドリア機能をDHR(ROS産生能を指標)を使用し敗血症患者と健常人を比較すると、敗血症患者において蛍光強度が上昇しており、ミトコンドリア機能は上昇していた。即ち、ミトコンドリア機能促進によりATP(アデノシン三リン酸)産生が上昇し、細胞外へのATP放出も増加したと考えられる。一方、免役システムの評価として単球細胞膜上のHLA-DR、PD-L1発現量、T細胞細胞膜表面上のPD-1発現量をフローサイトメトリーにて測定した。HLA-DR、の発現は健常人に比較し有意に低下しており、単球の抗原提示能の低下が確認された。また免疫抑制のマーカーとして知られるPD-L1の発現は増加しており、免役抑制状態が示唆された。T細胞細胞膜表面上のPD-1発現量は健常人と敗血症患者で有意差を認めなかった。T細胞機能を評価するためPBMCの培養液中のIL-2産生能の測定をELISA法にて測定した。敗血症患者では健常人に比較し有意にIL-2産生能が低下しており、T細胞機能の低下が確認された。上記結果を総合して考えると敗血症では免疫抑制状態にあることが確認でき、細胞外ATPが免疫抑制状態を惹起するという申請者らの仮説を裏付ける結果を得た。また、T細胞の遊走に関与するCXCR-4のT細胞上の発現量の測定も行ったところ、敗血症患者での有意な上昇を認めた。CXCR-4はSDF-1αにより刺激されるとATPを細胞外に放出することが知られているが、これも細胞外ATP上昇に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりに実験を進められており、今後も新たな実験を計画しているため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の仮説を証明するため、より多くの検体を収集し、実験結果の妥当性を証明する。また、本研究を行う中で新たに発見したマーカー(CXCR-4など)については健常人の血液を用いた基礎実験を行い、免役抑制の原因となっている可能性につき検証する。 また、申請者が留学中に行った実験よりT細胞が活性化する際にP2X4受容体によるシグナル伝達が関与しており、一方でP2Y11受容体がT細胞を抑制することが明らかとなった(Ledderose C et al.: The purinergic receptor P2Y11 choreographs the polarization, mitochondrial metabolism, and migration of T lymphocytes. Sci Signal 2020; 13:eaba3300)。申請者らはP2X4とP2Y11受容体の発現量の比が免疫状態を反映するbiomarkerとなりうるという仮説を新たに立てた。引き続き敗血症患者の血液を用い、この仮説も検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスパンデミックの影響で敗血症患者検体の測定数が減少したため。
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