研究課題/領域番号 |
20K09301
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
島田 忠長 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (40436423)
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研究分担者 |
中田 孝明 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20375794)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 白色脂肪細胞 / 褐色脂肪細胞 / 病原体脂質 / 皮下脂肪 / 内臓脂肪 |
研究実績の概要 |
令和2-3年度の研究では、ラット由来の白色脂肪細胞及び褐色脂肪細胞にlipopolysaccharide (LPS)を添加し、VLDLRを介した病原体脂質の取り込み能を、フローサイトメトリー法で解析した。皮下脂肪由来の白色脂肪細胞に比して、褐色脂肪細胞ではLPSの取り込みはごくわずかであり、脂肪細胞の種類によってLPSの取り込みに違いがあることが判明した。生体内の脂肪組織は褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞が混在していると想定されていることから、当初の仮説では、皮下脂肪と内臓脂肪において、褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞の割合の差が、LPSの取り込み能の差につながっているとしていた。 先行実験ではマウスの生体脂肪組織から脂肪細胞を分離し、分離した脂肪細胞にLPSを添加し、VLDLRを介したLPSの取り込み能を検討している。この実験において、皮下脂肪細胞と内臓脂肪細胞ではLPSの取り込み能に差が認められた(未発表)。そこで令和3年度の研究では、皮下白色脂肪細胞と内臓白色脂肪細胞におけるLPSの取り込み能を比較検討した。いずれの細胞も想定よりLPSの取り込みは軽度であった。 そこで、まず脂肪細胞におけるVLDLRの発現を確認し、脂肪細胞への分化誘導が私的な条件で行われていることを明らかとすることとした。Western blot法でVLDL発現を確認したものの、PCSK9投与によるVLDLRの発現低下が認められなかった。原因として、試薬や脂肪細胞そのもの、分化誘導の至適条件等を検討しているところである。 今回の実験結果から、褐色脂肪細胞はLPSの取り込み能がほぼ認められず、皮下脂肪由来・内臓脂肪由来の白色脂肪細胞もLPSの取り込み能は十分ではなかった。その為、先行実験との違いが生じているものの、褐色脂肪と白色脂肪による違いは明確であると言える。 現在、褐色脂肪とは白色脂肪におけるLPSの取り込み能に違いがあるという報告はないことから、今回の実験結果は新たな知見となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は皮下白色脂肪細胞と内臓白色脂肪細胞のLPSの取り込み能の違いを検討する予定であった。しかし、いずれの細胞もLPSの取り込み能が想定していたよりも軽度であった。先行実験においても、VLDLが発現する至適な分化誘導が必要であり、まずは各脂肪細胞でのVLDL発現を確認する方針とした。 Western blot法でVLDL発現を確認したものの、PCSK9によるVLDLR発現低下を得ることができなかった。PCRの条件や、最適な試薬の調製に時間を要したため、当初の予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは令和4年度の研究計画である、『ヒト皮下脂肪由来細胞及び内臓由来細胞を用いたLPS取り込み能』に関する実験を完遂する。 この研究により、皮下脂肪由来の白色脂肪細胞と内臓脂肪由来の白色脂肪細胞の間で、LPSの取り込み能に違いがあるかどうかを検討する。その後、当初の予定に沿って、VLDLR発現をWestern blot法にて証明する。また、蛍光標識抗体による免疫染色を行い、脂肪細胞内へのLPS取り込みを証明する。さらに、LPSの取り込みにおける炎症反応を検討するために、細胞培養液中のサイトカイン蛋白(IL-6, IL-1, IL-10等)をELISA法にて測定する。LPS取り込み、免疫染色、VLDLR蛋白、サイトカイン蛋白測定を、白色脂肪細胞及び褐色脂肪細胞にて行い比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に実験予定であった、『ヒト皮下脂肪由来細胞及び内臓由来細胞を用いたLPS取り込み能 』に関して着手をしたが、VLDLR発現に関する十分な結果下られず、完遂することが出来なかったため、その先の実験に着手ができなかった。まずはこの実験を完遂し、内臓及び皮下由来の白色脂肪細胞でのLPS取り込み能とVLDL発現の差を比較する。 試薬や細胞培養液は購入しているが、脂肪細胞は継代不能であることから、次年度使用額にて再度脂肪細胞を再度購入予定である。
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