研究実績の概要 |
本研究では、救急蘇生領域の診療フローにおける臨床判断や診療の管理を支援し、臨床成績の向上、臨床医の負担軽減へ繋がる機械学習モデルの開発を行うことを目的として機械モデルを作成した。救急蘇生統計を利用した心原性心肺停止の予後予測モデルの開発では、総務省消防庁の救急蘇生統計2005年から2016年の1,423,338例を対象に18歳以上の推定心原性心肺停止例を抽出し、584,784例を学習、223,314例を検証用として、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、マルチパーセプトロン、グラディエントブースティング決定木による予測モデル作成を行なった。神経学的予後良好を予測したモデルにおいて、グラディエントブースティング決定木モデルがROAUC及びPRAUCともに優れた結果を示した。入院時の電子診療録の情報から患者死亡リスクを予測するモデルの開発では、2009年から2017年の東京大学医学部附属病院の173,578回の入院のエピソードを対象とし、119,160回の入院を学習用、33,970回の入院を検証用として、入院時の採血及び患者背景情報を入力として、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、マルチパーセプトロン、グラディエントブースティング決定木によって14日以内の院内脂肪を予測する機械学習モデルの作成を行なった。ROAUCにおいてはランダムフォレストとマルチパーセプトロンが優れていたが、PRAUCにおいてはグラディエントブースティング決定木が最も優れていた。本研究により機械学習技術の救急蘇生領域への適用可能性が示されたとともに、機械学習によるリスク層別化を行うことで、医療の質の向上に資するこ可能性が期待できると考えられた。
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