研究課題
Micro RNA(miRNA)は低分子non-coding RNAの一種で、相補的な配列を持つmRNAに結合して翻訳抑制による遺伝子の発現抑制を行っている。近年、末梢血中のmiRNAが細胞間の情報伝達に重要な役割を果たしていることが示されている。本研究は、敗血症患者における血清中のmiRNAに着目し、その固有の発現パターンを解明することで、次世代の高感度バイオマーカーとして有用性を評価することを目的としている。2020年度から2021年度にかけて敗血症患者30名、健常対照10名が研究に参加登録した。2022年度は採取した検体より末梢血中の白血球よりmRNAおよびmiRNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いてmRNAとmiRNAの発現パターンを照らし合わせ、miRNA targeted mRNAのパターンを解析、健常者と敗血症で比較した。結果、敗血症の白血球におけるmiRNAとmRNAの発現が有意な相関、または逆相関するいくつかのパターンが明らかになり、RNAによる炎症反応のシグナル伝達経路の一端が明らかになった。さらに2023年度は患者12名、健常対照4名を対象として、白血球のmRNA、miRNAに加えて、血漿miRNA(循環miRNA)のRNAシークエンシングを行い、敗血症患者において健常対照と比較して変化のある遺伝子を解析した。結果、白血球mRNA1663個とmiRNA14個の発現が有意に変動した。細胞シグナルはTh2シグナルが最も抑制され、GATA3 mRNAの抑制が顕著であった。また白血球および血漿のGATA3 mRNAと関連するmiRNAのうち、血漿における12の循環miRNAが敗血症で発現上昇を示した。以上の結果より、GATA3 mRNAは敗血症において抑制され、循環miRNAがGATA3 mRNAの制御に関与していたことが示唆された。
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