研究課題/領域番号 |
20K09309
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
伊関 憲 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70332921)
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研究分担者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症応答 / 脂質代謝酵素 / LPS / 転写因子 / NF-kB |
研究実績の概要 |
救急診療における重要症例には、様々な中毒や交通外傷が含まれる。中毒は、様々な医薬品の他に、一酸化炭素や有機リンなどの農薬、炭化水素などの工業品による死亡事例が多く、一方、交通外傷は心血管障害等による脳損傷を引き起こす。これら中毒や外傷に続く炎症応答は、生体防御機構のみならず、組織再生機構の起点になるもので、この炎症応答をコントロールすることが、救急症例の対応に重要なポイントであると思われる。臨床現場ではCTやMRIによる画像診断や様々な血液データをもとに対症療法が行われるが、様々な症例に関する組織・細胞レベルでの炎症応答の理解は、医療技術の向上と共に、医学の進歩に重要であると考えられる。申請者等はこれまで、細胞内シグナル伝達に関わる酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーの生理機能の解析に従事し、様々な疾患モデルを用いて病態との関連性を追求してきた。本研究では、救急症例の中で、生体の主要な臓器である肝臓と脳の障害に着目し、生体侵襲の病態における組織・細胞レべルの応答メカニズム解明に向けた基礎科学的アプローチを行い、障害の軽減と回復の促進を目指すものである。これまでの研究により、リポポリサッカライド(LPS)投与によるエンドトキシンショック動物実験炎症応答モデルにおいて、LPS投与による24時間後の生存率は、野生型マウスで60%であったが、イプシロン型DGK欠損マウス(DGKε-KO)は100%が生存することを見出した。本年度は、炎症応答を制御する主要な転写因子NF-kB経路を解析したところ、DGKε欠損細胞では、LPS刺激後のNF-kBのp65サブユニットの核内移行が抑制されていることを見出した。この結果は、DGKε欠損により、炎症応答が抑制される可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度のエンドトキシンショック動物実験炎症応答モデルにおいて、DGKε-KOマウスの死亡率が著しく低いことが明らかになったことを受け、炎症応答を制御する主要転写因子であるNF-kB経路を解析した。その結果、DGKε欠損により、NF-kB経路が抑制されていることを示唆するデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、NF-kB経路を制御するAktの発現とその活性化レベル、および肝障害を引き起こすメカニズムの一つである誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現と肝障害レベルの相関を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画として炎症応答転写因子NF-kBのリポーターアッセイを行う予定であったが、DGKε-KO細胞へのリポーター遺伝子の導入効率が悪く、安定した実験データが得られず、その分の実験費用を次年度に回すことになった。今後、通常のヒト培養細胞にsiRNAによるDGKεノックダウン実験を試行し、リポーターアッセイを実施する。得られた実験データを詳細に検討し、NF-kB経路の解析を行う。
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