研究実績の概要 |
背景:悪性グリオーマに対する免疫療法には、腫瘍細胞が構築する免疫抑制の機序の理解が必要である。グリオーマ細胞は、強力な免疫回避機構を有するトリプトファン代謝酵素Indoleamine 2,3 - dioxygenase (IDO)を産生するためその関与が推定されている。しかし、IDO阻害薬の種々の治験が行われたものの抗腫瘍効果は限定的だった。今回、3種類のIDO阻害薬を創薬し、IDOを誘導するサイトカインであるIFN-γの局所的な抑制がIDO阻害剤と賦活的に働くという仮説を検証した。 方法:GL261細胞 1x106をC57BL6右大腿皮下に移植した同種モデルを用いた。①IDO阻害薬:創薬A, B, Cを胃管より連日投与し経時的な腫瘍体積を測定しCTL群と比較した (n = 5-10) 。②IFN-γの影響:IFN-γ抗体 100μgを週2回腹腔内投与した。③腫瘍組織のIDO発現を免疫染色で比較した。④ELISA:各群の血清トリプトファン-キヌレニン濃度を測定した。結果:①IDO阻害薬による腫瘍平均体積のCTL比は、創薬A, B, C群でそれぞれ47.0, 57.0, 9.8 %で (P< 0.05) 有意差を認めた。②IDO阻害薬に加えてIFN-γ抗体投与群では、36.8, 38.5,5.5 %とIDO阻害薬の抑制効果が増強した。IDO阻害薬CおよびC+IFN-γ抗体群は、CTL群に比べ生存期間の有意な延長を認めた (P= 0.009) 。③免疫染色では、CTL群組織のIDO発現は高く、IDO阻害剤の投与で抑制され、IFN-γ投与によりその効果が消失した。④血清のキヌレニン濃度は、CTL群、A薬群、A薬+IFN-γ群でIDO発現抑制の結果と連動した。結論:マウス悪性グリオ―マモデルを用いて、新規IDO阻害剤の経口投与とIFN-γ抗体投与は、相補的に抗腫瘍効果を有した。
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