研究課題/領域番号 |
20K09329
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
渡邉 孝 宮崎大学, 医学部, 講師 (90573337)
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研究分担者 |
水口 麻子 宮崎大学, 安全衛生保健センター, 講師 (00647472)
横上 聖貴 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40284856)
山下 真治 宮崎大学, 医学部, 助教 (40468046)
竹島 秀雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (70244134)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経膠芽腫 / 腫瘍内不均一性 / 表現型可塑性 / 代謝回路再編成 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
悪性脳腫瘍の代表である神経膠芽腫は治癒困難な疾患であり、高度な浸潤能、腫瘍内不均一性や表現型可塑性といった要因が、治療抵抗性や摘出限界に深く関与している。アミノレブリン酸(5-ALA)により誘導されるプロトポルヒィリンIX (PpIX)の蛍光強度は、増殖活性の高い部位で強く、神経膠腫の悪性度に応じてメチオニンの取り込みが亢進することが知られているが、メチオニン代謝経路の変化がPpIXの蓄積と蛍光強度にどのような影響を与えているのか未だ解明されていない。本研究では、メチオニン代謝経路が悪性神経膠腫の進展やヘム生合成経路に及ぼす影響について網羅的に検索している。当施設で樹立した神経膠芽腫幹細胞株をメチオニン除去培地で培養し、1) Clonogenic assay、タイムラプス動画撮影、2) マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析, 3) RRBSを用いたエピジェネティクス解析、4)RT-PCR、flow cytometryでの検証実験を行った。メチオニン除去培地では、コロニーが減少し、何らかの細胞死もしくは細胞周期の停止をきたしていた。マイクロアレイの結果から、メチオニン代謝産物であるS-アデノシルメチオニンキナーゼ依存性経路の低下が認められた。エピジェネティクス解析では、Global hypomethylationが認められ、ヘム合成経路に関与する遺伝子の遺伝子座特異的なメチル化の変化が認められた。検証実験では、Flow cytometryで、5-ALAにより誘導されるPpIXの蛍光強度の低下が認められた。また、RT-PCRで、メチル化に関与する遺伝子発現の変化とヘム合成経路に関与する遺伝子発現の変化が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの実験により、1) Clonogenic assay、タイムラプス動画撮影、2) マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析, 3) RRBSを用いたエピジェネティクス解析、4)RT-PCR、flow cytometryでの検証実験まで進んでおり、現在解析したデータを用いて、論文作成を行っている段階にきており、概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、Epigenetics network解析では、メチオニン除去によって、pluripotency of stem cell, porphyrin and chlorophyll metabolism, microtuble, glutamatergic synapse, KEGG Glioma pathway等の経路が影響を受けていたことが判明している。また、マイクロアレイを用いたGene Set Enrichment Analysis (GSEA)解析では、メチオニン除去によって、proneural-mesenchymal transition(上皮間葉転換)に関与する遺伝子発現に変化をきたすことが判明し、Stem cell marker(PROM1, OLIG2, FOXM1)が減少することが解ってきた。今年度からは、DNA メチル化のみならず、遺伝子発現修飾機構の解明のため、網羅的miRNA 解析を行って、non-coding RNA についても解析を進めたい。また網羅的DNAメチル化解析で得られたメチル化プロファイルの情報をもとに分類したメチル化のパターンを判別するアルゴリズムを用いて、メチオニン代謝経路を起点とした上皮間葉転換のドライバー遺伝子を同定し、特異的にメチル化された部位について、転写因子および histone markの関与について解析する。プロモーター、エンハンサーでの候補部位をクローニングし、点変異を導入することで、メチル化によって遺伝子発現が変化する部位を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ(Thermo, miRNA 4.0 array)を用いた網羅的miRNA発現解析、RRBSを用いた網羅的DNAメチル化解析、プロモーター、エンハンサー解析、標的遺伝子のプロモーター、エンハンサークローニング、点変異導入、ルシフェレースアッセイ用コンストラクト作製、クロマチン免疫沈降法(ChIP Assay)を計画しており、実施可能な時期が次年度となったため。
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