研究実績の概要 |
末梢神経軸索損傷後には再生機構がただちに稼働し、機能回復が期待できる。まず末梢側のワーラー変性に続き、末梢性グリア細胞が活発に再生活動にはいる。 これにはシュワン細胞遊走促進作用をもつガレクチン-1(Fukaya K, Hasegawa M et al, JNEN 2003)、Schwann細胞間の接着にはE-cadherin(Hasegawa-M et al, JNEN 1996)等の因子が関与する。一方で中枢神経の損傷時にはWaller変性により直ちに傍絞輪部の中枢性グリアの細胞突起の絞輪部での変化が始まり (Hasegawa M et al, Brain Res 198))、遠位側軸索が変性していくが、この後末梢性損傷では見られない中枢側の神経細胞体に向って起こる逆行性変性により 急激に神経細胞が脱落・消失してしまう。神経細胞逆行性変性の程度は、個体の成熟度や軸索の切断部位によって大きく異なる特徴がある。幼弱ラットでは末梢 軸索損傷であっても逆行性変性が誘発され、神経細胞は死に至る。一方、成熟ラットでは損傷部位が中枢での損傷であるほど逆行性変性は強い。我々が確立した 脳槽内顔面神経軸索束avulsionモデルはmildな変性モデルとして活用でき、この変性抑制にα2δ選択性に高い親和性を示すCa-blocker(pregabalin、Kavoussi R, Eur Neuropsychopharmacol. 2006)がこの顔面神経核内神経生存促進作用を持つこと、またこの作用には活性化マイクログリアが関与している可能性がある ことを見いだした(Moriya S, Hasegawa M et al, JNSci 2077)。neural stem/progenitor cellの生存や脳虚血再灌流障害に効果を示す免疫抑制剤 FK506(1mg/kg/day)を損傷後7日間連続皮下投与することで、2週で50%,4週で30%の保護効果を示すモデルを確立した。
|