研究課題/領域番号 |
20K09354
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
峯 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 訪問研究員 (10306730)
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研究分担者 |
武藤 淳 藤田医科大学, 医学部, 講師 (30383839)
金村 米博 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (80344175)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒトiPS-NESCs / ヒトiPS-NSPCs / MCAOモデルマウス / MCAOモデルラット / 脳内移植 / 神経回路網再構築 |
研究実績の概要 |
2021年度もCOVID-19流行が続き、本務先院内規定また大学規定により行動が制限された。このため、訪問研究員として行う研究の遂行にかなりの支障を来した。 1) 臨床グレードのヒトiPS細胞由来NESCsまたは神経幹細胞・前駆細胞(NSPCs)を既報(Oki et al.: Stem Cells 30: 1120-1133, 2011)や共同研究者 金村博士らの方法に準じ培養増殖し移植に必要な細胞数を確保した。また、移植後の細胞を追跡するためには蛍光タンパクなどで移植細胞を標識しておく必要がある。このためeGFPやmCherry遺伝子を導入したヒトiPS-NESCs/NSPCsを新たに作成・開発した。上述と同様の方法を用いて細胞を増殖し確保中である。 2) 既報(Mine et al.:Neurobiol Dis 52:191-203,2013)に準じて成体雄性ラット(SD、Wistar)・マウスにヒトiPS-NESCsまたはヒトiPS-NSPCsを移植し、生着・分化を確認する予定だった。しかし、上述した行動制限などや倫理委員会の手続きなどにより、移植実験を行う事が出来なかった。 3)一方、成体雄性ラット(SD、Wistar、体重250-300g)を用いた片側中大脳動脈閉塞モデル(閉塞時間30/60/90/120分)作成と生存を安定化させた。また、neurological score、stepping test、cylinder test、stair case testなどの評価系も確立した。更に、移植したヒトiPSC由来細胞と宿主動物の脳組織との神経回路網再構築を電気生理学的および免疫組織化学的に精密に解析を行うため、共同研究としてトランスジェニックマウスを新たに導入した。このマウスを用いて片側中大脳動脈閉塞モデル(閉塞時間30/45/60分)を作成し、安定化を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も2020年度に引き続いてCOVID-19流行が続き、私自身の本務先の院内規定また大学自体の規定により行動が制限された。このため、訪問研究員として大学構内立入や実験等に制限があり、研究の遂行にかなりの支障を来し、実質的な移植実験を進めることが困難で遅れにつながった。一方、移植ドナー細胞の追跡(トレース)のため、新たに蛍光タンパク遺伝子導入ヒトiPS細胞由来細胞を導入し、培養システムの確立と調整・確保をすることが出来た。また電気生理学および免疫組織化学的精査を進めるため、新たにトランスジェニックマウスを導入し、実験モデル動物(脳梗塞モデル)の安定した作成と評価系の確立を行うなど、新たなシステム確立を進める事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本来2021年度は脳梗塞亜急性期移植の継続と慢性期への移植研究を行う予定だったが、上述の様に進捗が遅れている。このため、早期に正常動物への脳内移植と脳梗塞亜急性期移植実験(対照群:培養液のみ、繊維芽細胞)を予定する。前者にて長期生存・分化・腫瘍形成の有無、新生神経細胞の有無や増殖度等を観察する。後者では損傷脳に対する移植iPS由来細胞の生着・分化・成熟や内在性NSCによる神経新生への影響(特に脳室下層)、抗炎症作用を評価する。そして行動学的検査結果との関連を解明する予定である。 また、神経回路網再構築の精査を電気生理学的に行うため、また研究の進捗と期間も考慮して、上述したトランスジェニックマウスによる疾患モデルを用いた移植実験を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行が続き、本務先の院内規定また大学自体の規定により行動が制限された。訪問研究員として大学構内立入や実験等に制限があり、研究の遂行にかなりの支障を来し、実質的な移植実験を進めることが困難で使用額も一部に留まった。 COVID-19の流行は依然として続いているものの、予防および対処方法の洗練により、行動を増やすことが可能となってきた。本年はこれまでの遂行の遅れを取り戻すべく、移植実験及び術後観察を多数行うため、細胞培養や動物飼育などで予算を執行する予定である。また実験に伴い、評価に必要な機器類や免疫組織化学に必要な試薬類も購入する。また、学会参加や発表を過去2年よりも行う予定である。
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