研究課題/領域番号 |
20K09355
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 教授 (60200177)
|
研究分担者 |
秋葉 ちひろ 順天堂大学, 医学部, 助教 (40837754)
中島 円 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50317450)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 認知症 / 髄液 / 老廃物 / クリアランス / 正常圧水頭症 / アルツハイマー病 / ベータアミロイド |
研究実績の概要 |
老廃物質の脳からのクリアランスの障害が、認知症の進行に寄与することが推定されている。本年度は、微弱な蛍光を超高感度冷却CCDカメラで捉え、定量化できるin vivo イメージングシステム(IVIS)を用いて、蛍光物質の脳からのクリアランスを測定する方法を確立し、脳のクリアランス機構を明らかにした。マウス尾状核に正確に蛍光物質を微量注入し、注入した蛍光物質をIVISを用いて経時的に定量した。また、注入15分後と60分後に摘出した脳切片を、共焦点顕微鏡を用いて観察した。更に、加齢による溶質のクリアランスへの影響と髄液排泄によるクリアランスへの効果を解析した。低分子の蛍光物質は、注入後1時間で速かにクリアランスされ、その後緩徐にクリアランスされ、半減期は約3時間であった。一方高分子量の蛍光物質は非常に緩徐にクリアランスされ、半減するまでに2日間を要した。15分後に低分子は速かに血管内に移行し、一部は脈絡叢上皮より吸収された。一方、高分子は血管周囲腔と上衣下に集積していた。60分後の脈絡叢上皮では低分子は消失し、高分子は上皮内に集積していた。低分子は、若年マウス(8週)では5時間で注入量の22%がクリアランスされたが、一方、老齢マウス(48週)では7%がクリアランスされたのみであった。更に大槽を開放し髄液の排泄を行うと、2.5倍速く低分子は脳よりクリアランスされた。一方、高分子は髄液ドレナージの排泄促進効果はほとんどなかった。老廃物質の脳からのクリアランスを、生存したまま経時的に測定できる方法を確立した。低分子は主に血管内に、一部は脈絡叢からもクリアランスされた。高分子は血管周囲腔に集積し、一部は髄液腔へ移行した。加齢により脳からの溶質のクリアランスは遅滞し、低分子は髄液排泄によりクリアランスは促進されたが、一方、高分子ではクリアランスの促進効果が得られなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢及び髄液排除による脳の排泄機構に及ぼす影響に関する実験は概ね順調に経過した。次年度より使用する実験動物の作成に時間を要している。本学で作成した正常水頭症のモデルマウス(Dnah14ノックアウトマウス)と理化学研究所より譲渡されたアルツハイマー病のモデルマウス(APPノックインマウス)を交配し、アルツハイマー病理を合併する正常圧水頭症モデルマウスの作成中であるが、Dnah14ノックアウト/ APPノックインマウスを得るのに難渋している。
|
今後の研究の推進方策 |
モデルマウスの作成に時間を要するため、APPノックインマウスの受精卵に、ゲノム編集を用いてDnah14ノックアウト/ APPノックインマウスを作成することを並行して行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の為、参加予定の国際学会が延期となり、国内の学会がWebとなり旅費および学会の参加費が不要となった。本年度は交配によるモデル動物の作成に苦慮した為、翌年度は新たにゲノム編集技術を用いてモデル動物の作成を行う。その為の物品費に本年度の助成金を使用する計画である。
|