様々な脳病変、今年度は特に器質的異常を認めない側頭葉てんかん患者の頭皮脳波、256チャネル高密度脳波、頭蓋内皮質脳波のデータを解析対象とした。任意の周波数規則性をエントロピー値として定量化できるサンプルエントロピー法を適用して、ガンマ波規則性をエントロピー値として算出し、ガンマ波規則性が有意に高い部をてんかん焦点と定義した。また、動的解析によりてんかん焦点と連動してガンマ波規則性上昇を認める部位との間にてんかんネットワークを描出した。さらに詳細な統計学的解析である統計諸量、ヒストグラム、正規性検定(シャピロ・ウィルク検定)、異常エントロピー発現継続時間、電極間相関解析、電極間ネットワーク解析、Sweep number・Channel number・Entropyの3D表示等を行うことで、てんかん焦点およびネットワーク検出法をほぼ確立することができた。これらによって示されたてんかん焦点およびてんかんネットワークを切除・切断することでてんかん発作の軽減または治癒という術後転帰が得られることを示し論文報告した。てんかん発生メカニズムには、介在ニューロンを主体とする過同期活動が深く関与し、ガンマ波規則性はその活動を検出できている可能性が高いことが示された。また、このガンマ波規則性解析の使用を希望する研究者向けに配布するためのプログラム、および最終版の実行ファイルをPython Windowsソフトに組み込んだプログラムを作成した。
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