研究課題
本研究の目的は膠芽腫の再発に関与する幹細胞マーカーの発現の有無を時間的空間的に解析することである。まず解析対象として初回の再発時に遠隔再発を症例に加え、診断時にすでに多発病変をきたしているもの、あるいは2回目の再発に遠隔再発を来たしたものを併せて多発・遠隔再発群と定義した。まず膠芽腫において最も高頻度に認められる変異であるTERTプロモーターに着目し解析すると変異型92例は有意に野生型に比較し多発・遠隔再発例が多い傾向にあった。その他遠隔再発に関与する因子を解析したところ、PTEN遺伝子の欠失に加え、幹細胞マーカーCD133の高発現が関連因子として考えられた。しかしながらCD133の発現とTERTプロモーター変異の有無は相関関係を認めなかった。またTERTプロモーター変異とその他の遺伝子異常との関連を検討すると変異群ではEGFR CDKN2A PTENといった膠芽腫に高頻度に認められる遺伝子異常と強く相関を認めたのに対し、野生型はPDGFR CDK4 TP53といった全く別の遺伝子異常と強く相関していた。またTERTプロモーター変異群は独立した予後不良因子であり、その浸潤性が予後不良に強く相関している可能性が示唆された。以上より、TERTプロモーター領域の変異を持った膠芽腫は、多発性・浸潤性に発育し予後不良であり、野生型と比較し全く別の遺伝子異常のプロファイルを持っている可能性が示唆された。今回明らかとなった遠隔再発関連因子がどのような機序で腫瘍の再発形式に関与するかは今後の検討課題である。
2: おおむね順調に進展している
本研究の初年度において腫瘍の再発形式に関与する3つの因子を明らかにすることができた。今後これらの因子がどのような機序で再発形式に関与していくかを明らかにする予定である。
再発検体や腫瘍検体でのCD133 TERT変異の有無等を解析し、時間的。空間的な発現の有無を解析する。
当初 予定していた特許出願のための費用が、手続き等の遅れから年度内に実施できず支出できなかった。今後、計画通りの支出をする予定
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Neurooncol Adv.
巻: 2 ページ: 114
10.1093/noajnl/vdaa114.