膠芽腫は成人脳腫瘍の中で最も予後不良であり、摘出術に引き続き、放射線化学療法を施行しても全生存期間中央値は18か月に過ぎない。膠芽腫が予後不良な原因として、脳という臓器の特殊性から、腫瘍の根治切除が不可能なこと、また放射線化学療法の抵抗性が挙げられる。化学放射線治療抵抗性の原因として腫瘍幹細胞の存在が知られている。我々は以前よりがん幹細胞マーカーCD133の発現が腫瘍の再発パターンに強く関与していることを明らかにしてきた。そこでまず本研究ではCD133が再発腫瘍において初発腫瘍より発現が上昇しているかを検討した。結果としてCD133の発現は必ずしも再発腫瘍において上昇は認められなかった。そこで腫瘍の浸潤性・再発に関係しているTERT遺伝子のプロモータ変異に着目し研究を行った。結果、TERT変異陽性例では画像上造影周囲のFLAIR領域のADC値が、低値であり、より腫瘍周囲のへの浸潤が高いことが示唆された。次に腫瘍組織内の細胞密度を測定したところ、TERT変異例に腫瘍細胞の密度が高いことが確認された。 以上より、膠芽腫においてはTERT変異の有無により腫瘍細胞の浸潤度が異なることが明らかとなった。今後、手術における摘出範囲の設定に有用である可能性が示唆された。
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