がん治療用遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型であるG47Δが実用化され、本研究では、膠芽腫マウスモデルをもちい、ウイルス療法における免疫細胞の動態 を解析することで治療抵抗性の機序を解明するとともに、その解析に基づいた治療介入を行うことで治療抵抗性を克服し、幅広い患者に高い治療効果を示すウイ ルス療法の実現を目的とする。令和2年度は、ヒト膠芽腫脳内腫瘍マウルモデルに対するウイルス投与で集族する免疫細胞の解析を行った。具体的には、腫瘍細胞としてヒト膠芽腫の代表的細胞株であるU87MG細胞を用いた。ウイルス治療には、所属研究室で開発され、再発膠芽腫に対する第II相臨床試験で高い治療効果を示し実用化を待つ第三世代単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)(G47Δ)を用いた。はじめに、ウイルス感染細胞と初代培養免疫細胞を用いて、in vitroでの細胞遊走試験を行った。次にin vivoでの腫瘍力学動態の解析のためにU87MG細胞株にルシフェラーゼ発現遺伝子を導入した。樹立した細胞株を用いてヒト膠芽腫xenograftモデルに対して経時的なルシフェラーゼアッセイとMRIによる頭蓋内腫瘍体積の計測を行い、ルシフェラーゼ測定によって腫瘍体積を確認できる実験系を確立した。この実験系を用いてヒト膠芽腫xenograftモデルに対するG47Δの腫瘍内投与を行い、ウイルス療法における腫瘍力学動態の詳細な解析を行った。令和3、4年度は、in vivoでの解析を中心に検討を行った。ヒト膠芽腫の代表的細胞株であるU87MG脳腫瘍モデルに対するG47Δを用いた治療実験を行った。CSF-1受容体阻害薬の経口投与(薬剤のエサへの混合)を併用した場合に治療効果について、生存実験、脳サンプルを用いた免疫組織化学染色、RNAシーケンスによる微小環境解析を行った。
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