研究課題/領域番号 |
20K09366
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三木 一徳 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (00536823)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳動脈新生 / 側副血行 / 脳血管障害 / arteriogenesis / mRNA |
研究実績の概要 |
脳梗塞治療として再開通療法と同時に、脳血流の低下を防ぎ、いかに梗塞に陥らせないかという治療戦略が非常に重要であり、実現すれば非常に多くの脳梗塞症 例に適応しうる。実際に成体脳であっても脳梗塞後に新たな血管が形成される現象が認められ、大きく分類してAngiogenesis(血管新生)及びArteriogenesis (動 脈新生)の二つが知られている。特に血管内皮細胞だけでなく平滑筋、基底膜よりなる口径の大きな新たな機能する動脈の発達を意味するArteriogenesis (動脈 新生)は、脳の主幹動脈が閉塞した場合に側副血行路として機能し、脳血流の保持が可能となる。実際に、我々も脳表の動脈新生の発達した症例では脳梗 塞の梗 塞体積が減少し、機能予後が良好であること臨床研究にて確認した。その強い脳保護効果から、動脈新生の発達を促す方法の開発が期待されているもの の、未 だ開発されていない。我々は内皮細胞に発現するスフィンゴシン1リン酸受容体1(S1P1)がシアストレスを感知し、その下流のシグナリングを誘導すること、S1P1 選択的作動薬であるSEW2871を中大脳動脈永久閉塞モデル(permanent middle cerebral artery occlusion;pMCAO)のマウスに投与し、脳軟膜動脈へのリモデリン グ 効果を認めマウスの脳軟膜動脈は有意に発達すること、脳血流の改善、脳梗塞体積の減少、神経所見の改善が認めることを確認した。また血管内皮細胞の S1P1R遺伝子発現を抑制するsiRNAをモデルマウスに投与、慢性低灌流モデルを作成し、脳血流、脳新生動脈、出現細胞、血管新生関連因子と S1P1Rの発現の解析 を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性低灌流モデルにおける動脈新生に関わる再生メカニズムとズリ応力のKey RegulatorとしてのS1P1Rの発現増加のinteractionの解明 マウス慢性低灌流モデ ルにより発達する脳軟膜動脈における動脈新生の血管標識による定量と、レーザードップラー法及びNanoSPECT/CTによる脳血流定量結果 の対比を行うことによ り、動脈新生が実際に脳血流を改善させる部位及びその程度を確認する。 動脈新生の際の動脈を構成している細胞(平滑筋細胞、内皮細胞など)の再生能力を免 疫染色で検討し、動脈新生促進後の梗塞脳における炎症細胞の検討を Cell sorterを用いた手法で解析する。 微小血管を蛍光標識しレーザー顕微鏡により赤血 球の動きを観察することでずり応力を計測しS1P1Rの発現との関連を検討する。さらにその下流因子である ERK、Akt、eNOS、Racの発現量も確認し、メカニズム を詳細に検討する。以上のような検討により、pMCAO後のS1P1の発現推移、In vitro虚血モデルにおけるS1P1発現、pMCAOマウスの予後改 善効果、脳軟膜動脈を介した側副血行路へ の影響、血管新生への作用、BBBへの作用などが確認できた。 ただしここ数年度にわたる全国的なコロナ感染症による緊急事態宣言などを受けて、実験を停止せざるをえないことや物品調達のおくれなどが生じることも多く、全体的な実施計画に遅れを生じやすい傾向となっている
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今後の研究の推進方策 |
1. siRNAを用いたS1P1Rの遺伝子的発現制御による脳虚血後動脈新生の検討 血管内皮細胞のS1P1R遺伝子発現を抑制するsiRNAをモデルマウスに投与、慢性低灌 流モデルを作成し、脳血流、脳新生動脈、出現細胞、血管新生関連因子と S1P1Rの発現の解析を行う。 2. スフィンゴシン1-リン酸受容体を介した脳動脈新生制御による新規脳梗塞治療の開発 慢性低灌流モデルに対して、S1P1Rの選択的アンタゴニスト(W146な ど)、S1P1Rの選択的アゴニスト(SEW2871など)、もしくは水溶性S1Pを投与し、動脈新生 賦活化効果を検討し、さらに中大脳動脈閉塞後の脳梗塞縮小効果、行動 機能改善効果を明らかにする。 これら検討により、実際に臨床応用する場合の最適な投与方法、治療時期、治療方法、薬物使用容量などを明らかにすることが 出来る。 3. 結果については現在までのところ既存の報告を超える新たな知見を得られてはおらず、新たに虚血脳内の血管内皮細胞で発現するいくつかのmRNAなどをターゲットにした、microRNAを用いたアンチセンス手法により虚血脳内の血管内皮や脳細胞の保護治療つながる知見についての開発検討を平行して行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は全国的なコロナ感染症による緊急事態宣言などにより実験を停止した期間などが長く、当初計画より消耗品、備品購入費用などが少なかった。また学会 などの中止が続き出張旅費が少なかった。本年度は実験消耗品などの追加で購入が予定されているため、費用を必要とする見込みである
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