脳梗塞治療として再開通療法と同時に、脳血流の低下を防ぎ、いかに梗塞に陥らせないかという治療戦略が非常に重要であり、実現すれば非常に多くの脳梗塞症 例に適応しうる。実際に成体脳であっても脳梗塞後に新たな血管が形成される現象が認められ、大きく分類してAngiogenesis(血管新生)及びArteriogenesis (動脈新生)の二つが知られている。特に血管内皮細胞だけでなく平滑筋、基底膜よりなる口径の大きな新たな機能する動脈の発達を意味するArteriogenesis (動脈新生)は、脳の主幹動脈が閉塞した場合に側副血行路として機能し、脳血流の保持が可能となる。実際に、我々も脳表の動脈新生の発達した症例では脳梗塞の梗塞体積が減少し、機能予後が良好であること臨床研究にて確認した。その強い脳保護効果から、動脈新生の発達を促す方法の開発が期待されているものの、未だ開発されていない。我々は内皮細胞に発現するスフィンゴシン1リン酸受容体1(S1P1)がシアストレスを感知し、その下流のシグナリングを誘導すること、S1P1 選択的作動薬であるSEW2871を中大脳動脈永久閉塞モデルマウスに投与し、脳軟膜動脈へのリモデリング効果を認めマウスの脳軟膜動脈は有意に発達すること、脳血流の改善、脳梗塞体積の減少、神経所見の改善が認めることを確認した。また血管内皮細胞の S1P1R遺伝子発現を抑制するsiRNAをモデルマウスに投与、慢性低灌流モデルを作成し、脳血流、脳新生動脈、出現細胞、血管新生関連因子と S1P1Rの発現の解析を行っている。また我々が脳虚血部位周囲の血管内皮細胞に発現するmRNA制御のための新たな第二世代核酸医薬の開発を行なっていることを利用し、S1P1Rシグナルの制御に関する新たな治療ターゲットとなるmicroRNAなどを検討している。
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