研究課題/領域番号 |
20K09367
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
片岡 大治 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (40359815)
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研究分担者 |
八木 高伸 早稲田大学, 理工学術院, 主任研究員(研究院准教授) (00468852)
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / 血行力学的負荷 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、ラットの頚部頚動脈に動脈瘤を誘導するモデル(CCAモデル)を用いて、血管の分岐角度と、その後の脳動脈瘤増大について検討し、動脈瘤進行群で当初の分岐血管の分岐角度が有意に大きいことを報告した。また、進行群の動脈瘤の増大時期に cellular communication network factor 1 (CCN1) の発現が上昇することをprotein array analysisと免疫組織染色で明らかにした。 昨年度は、確立した破裂モデルを用いて、破裂部周囲に新生血管の増生がみられることを報告したが、令和3年度は、この血管新生に低酸素環境で誘導されるマクロファージからのvascular endothelial growth factor(VEGF)が作用していることを見いだした。また、従来の脳動脈瘤発生モデル及び破裂モデルを用いて、動脈瘤壁に集積するマクロファージの遺伝子発現profileを解析し、脳動脈瘤壁に集積するのマクロファージの役割につき、さらに詳しい検討を行っている。 ヒト脳動脈瘤による増大・破裂に関与する血行力学的因子の検証では、京都大学及び関連4施設から、観察中に増大・破裂をおこした脳動脈瘤と3年以上増大も破裂もしなかった脳動脈瘤の画像データの登録を完了し、この2群間でCase Control Studyを行った。前交通動脈瘤については、増大・破裂群27例とコントロール群65例の比較を行い、増大・破裂群で前交通動脈と前大脳動脈の分岐角度が有意に大きいことを示した。また多変量解析においても同分岐角度は増大・破裂を予測する独立した危険因子であった。現在、中大脳動脈瘤についても同様の解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳動脈瘤モデル動物を用いてCFD解析に関しては、すでに1年目に、ラットのWillis動脈輪の嗅動脈-前大脳動脈分岐部に脳動脈瘤を誘発するモデル(OAACAモデル)を用いて、7T-MRIによる血管形状データを取得してCFDを行い、脳動脈瘤発生に関与する血行力学的因子を明らかにした。また、ラットの頚部頚動脈に動脈瘤を誘導するモデル(CCAモデル)を用いて、7T-MRIによる血管形状データを取得してCFDを行い、脳動脈瘤増大に関与する血行力学的因子及び慢性炎症との連関の一端及び、脳動脈瘤増大と血管分岐角度の関係を明らかにした。1年目に確立した脳動脈瘤破裂モデルを用いて、2年目に予定通り組織学的検討を行ったおり、そこで得られた知見を今後さらに掘り下げていく。 ヒト脳動脈瘤による増大・破裂に関与する血行力学的因子の検証では、当初の予定通り、京都大学をはじめとする4施設で症例登録を終了し、一部解析を終了して論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
脳動脈瘤モデル動物を用いてCFD解析に関しては、今後CCAモデルにおける脳動脈瘤増大のメカニズムのさらなる解析と、破裂モデルを用いた脳動脈瘤破裂メカニズムの解析を行っていく。脳動脈瘤動物モデルにおける組織学的所見の詳細な検討については、CCAモデル、破裂モデルを用いて、さらなる解析を行っていく。観察項目は、内弾性板の断 裂、内皮細胞障害、炎症性サイトカインの発現、平滑筋細胞の形質転換やアポトーシス、マクロファージの集積、線維芽細胞の活性化、コラーゲン・エラスチンなどの細胞外基質の産生と分解、血管内腔の血栓形成に加えて病変部に集積するマクロファージや好中球のcharacteraizationを進めていく。 ヒト脳動脈瘤による増大・破裂に関与する血行力学的因子の検証では、京都大学及び関連4施設から、観察中に増大・破裂をおこした脳動脈瘤と3年以上増大も破裂もしなかった脳動脈瘤の2群間でCase Control Studyを行い、令和3年度に明らかにした前交通動脈瘤に加えて、他の部位の動脈瘤についても脳動脈瘤発生・増大・破裂を引き起こす血行力学的因子をヒト脳動脈瘤において明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症の蔓延のため、学会がほとんどWeb開催となり、学会出張のために計上した旅費が予定よりかなり少なくなった。次年度に繰り越した研究費については、基礎研究及び臨床研究の消耗品に使用する予定である。
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