研究実績の概要 |
令和4年度は、CCAモデルを用いて、増大期の動脈瘤壁に集積するマクロファージの遺伝子発現profileを解析し、従来より知られているM0、M1, M2などの分画とは異なる、神経伝達物質により制御される特有の分画のマクロファージが集積することを明らかにした。また、破裂モデルを用いて、動脈外膜の低酸素環境がマクロファージからのVEGF産生を亢進させて、動脈瘤破裂のつながるvasa vasorum新生を促すことを見いだした。また、観察中に増大・破裂をおこした脳動脈瘤と3年以上増大も破裂もしなかった脳動脈瘤のCase Control Studyでは、中大脳動脈瘤におおいて、母血管から動脈瘤内への流入血流量の比を示す、aneurysmal inflow coefficient (AIRC)が、脳動脈瘤増大に関与する独立した危険因子であることを示した。 研究期間全体を通じて、(1)脳動脈瘤モデル動物を用いてCFD解析では、ラットの頭蓋内に脳動脈瘤を誘発するOA-ACAモデルを用いて、脳動脈瘤発生に関与する血行力学的因子を明らかにし、ラットの頚部頚動脈に動脈瘤を誘導するモデル(CCAモデル)を用いて、脳動脈瘤増大に関与する血行力学的因子及び慢性炎症との連関を明らかにした。(2)脳動脈瘤動物モデルにおける組織学的検討では、OA-ACAモデルの電顕を用いた解析で脳動脈瘤発生時の形態変化の詳細を解析し、破裂モデルで破裂部位近傍のvasa vasorumの発達とその分子機序の一端を明らかにした。(3)ヒト脳動脈瘤による増大・破裂に関与する血行力学的因子の検証では、京都大学をはじめとする4施設で症例登録を行い、増大群と非増大群のcase control studyにより、動脈瘤に血管分岐角度やそれに伴う瘤内への血流流入量が重要な因子であることを証明した。
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