研究課題/領域番号 |
20K09374
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
秀 拓一郎 北里大学, 医学部, 准教授 (40421820)
|
研究分担者 |
隈部 俊宏 北里大学, 医学部, 教授 (10250747)
犬飼 円 北里大学, 医学部, 助教 (10525695)
柴原 一陽 北里大学, 医学部, 講師 (30791016)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 膠芽腫 / オリゴデンドロサイト / ニューロン / Border Niche |
研究実績の概要 |
膠芽腫は主に成人脳実質に発生する予後不良の腫瘍である。膠芽腫のほとんどの再発は摘出腔周囲白質であるが、通常は摘出脳組織を用いた研究が行われるため、再発の多い摘出腔周囲白質の詳細な検討は行われていなかった。これまで、我々は腫瘍境界部である摘出腔周囲白質の注目し、特に治療抵抗性や再発に関係する幹細胞性の誘導に注目して研究を行った結果、オリゴデンドロサイト系譜細胞やマイクログリア・マクロファージが集積することを見出し、集簇するオリゴデンドロサイトのことをglioma-associated oligodendrocyte(GAO)、また膠芽腫細胞の幹細胞性誘導維持に関与するこの微小環境のことをBorder nicheとして報告した。 現在腫瘍境界部を含む摘出組織と、剖検脳を用いた免疫染色の実験を行っている。Olig2は膠芽腫患者剖検脳の解析においても、浸潤領域の腫瘍と正常部分の境界部分で陽性細胞の集簇を認めた。これは膠芽腫の初発病変だけではなく、再発から結果的に死亡となった患者脳内においても、腫瘍境界領域ではOlig2陽性細胞が集簇し、Border Nicheを形成することを示しており、普遍的な反応と考えられ大変興味深い結果である。剖検脳組織は過固定になっている傾向があり、症例によっては免疫染色での検討ができにくいという問題点があった。 免疫染色はニューロン(MAP2)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(Olig2, NG2)、グルタミン酸受容体(AMPAR, NMDAR)だけではなく、さらに種々のニューロンに特異的な抗体も購入しており、現在、免疫染色の条件検討を行っている。 今後は再発部と非再発部の微小環境の詳細な検討を行う予定であり、治療抵抗性や再発の原因となるBorder Nicheという視点から、新たな治療法を目指したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
剖検脳を用いた免疫染色による検討も行っており、実験は順調に進行している。 剖検脳組織は過固定になっており抗原性が低下している場合も想定していたが、症例によっては組織の部位により染色性が低下している場合もあった。 さらに種々の神経細胞に特異的な抗体も購入しており、現在条件検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在は、膠芽腫組織及び剖検脳を用いた免疫染色で検討している。抗体はニューロン(MAP2)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(Olig2, NG2)、グルタミン酸受容体(AMPAR, NMDAR)だけではなく、さらに種々のニューロンに特異的な抗体も購入しており、現在、免疫染色の条件検討を行っている。 剖検脳のか固定による免疫染色時の染色性の低下を回避するために、剖検時に関心領域数か所は別に切り出しておいて、免疫染色を行うように工夫をしている。 また、今後は再発部と非再発部の微小環境の詳細な検討を行う予定であり、治療抵抗性や再発の原因となるBorder Nicheという視点から、新たな治療法を目指したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症の影響で学会がWeb開催になるなどしたため旅費としての使用がなかった。 研究自体は順調に進行しているが、技術補助員の病気休職後の退職があり、新たな技術補佐員の採用という予定外のことが発生した。そのために、実験ができなかった部分があったため次年度使用額が発生した。 次年度にマウス脳内への膠芽腫幹細胞移植実験を計画し、免疫染色などによって詳細な検討を行う予定である。また、再発部と非再発部の差異に対してのmiRNAマイクロアレイを用いた検討も次年度以降に施行予定である。
|