本研究の目的は,フラビン蛍光法を,脳神経外科手術中に「ヒト大脳の機能野の直接可視化,そしてモニタリング法として応用」することである.術中記録シス テ ムの概要は,新潟大学手術部に備え付けの既存のライカ社製OH-4システムに,レーザー照明装置( ミズホ社製 MML-01)が搭載されている.備え付けられている 高感度CCDカメラユニットシステムを使用し,光源側にflavoprotein反応の励起波長を,カメ ラ側に反応の捕捉波長用のフィルター調整を行い,反応の可視化が 可能な状態としている. PC上で既存のソフトウェア上で得られる反応を術 野モニターとfusionし,実際に脳表画像上に神経活動域を可視化できるように,プロ グラム作成をした. 今回,我々は本システムを用いて,ヒトでの術中の脳表電気刺激により誘発される脳皮質活動に関して,フラビン蛍光法による自家発光として観察することで症例を重ね,かねてから紹介されていた血流イメージングとしての脳機能イメージとフラビン蛍光法による機能イメージの差異,具体的に後者が皮質活動そのものを表していることを示すことができた.また動物実験を経てヒトでの活動は脳そのものの構造から動物と比べて観察しにくいことも明らかにした. 今回,研究目標として立てた,観察システムのリアルタイム化に関しては,方法論としては達成し,肉眼観察できるようになったが,まだ構造が複雑になっており,汎用性の点では完成には到達していない.今後の改良を要する. さらに,てんかん外科症例における大脳表面の自発放電の観測や,感覚刺激に対する誘発反応の記録が可能かどうかの検討に関しては,症例を重ねたが,現在まだ有効な条件を検討中にあり,成果を示すことができなかった部分である.理論的には可能な内容であり,今後も研究を継続してゆく.
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