研究実績の概要 |
今年度は、まず、LGR4の発現を部分再開通モデルにおいて確認した。梗塞部位のrealtime RT-PCRでの検討では、正常部位に比較し、1日目、3日目の梗塞部位では発現は低下しているものの、LGR4の発現は維持されていた。免疫染色での検討では、LGR4は正常部位では神経細胞に、また、梗塞部位においては傷害神経細胞およびミクログリア・マクロファージに発現しており、申請時にBAEC(bovine aortic endothelial cells)細胞の検討から想定された血管内皮細胞でのLGR4の発現は認められなかった。この結果から、LGR4を介したeNOSの発現増加による部分再開通部位における血流増加をMHP1(RANKLペプチド)では期待できないと考えられたが、念のため、部分再環流直後に頚静脈内に投与し、Laser speckel imageで血流の変化を解析した。結果としては、部分再環流部位での血流の増加は認められなかった。一方で、LGR4はミクログリア・マクロファージに発現しているため、我々が一過性虚血モデルで報告してきたミクログリア・マクロファージにおけるTLR関連炎症抑制を介した治療効果(Shimamura, et al. 2018)も期待できると考え、脳梗塞サイズの計測も行ってみたが、明らかな縮小効果は認められなかった。以上のことから、脳梗塞超急性期にMHP1を用いたLGR4を標的にした治療法は、部分再開通においては効果が無いことが明らかとなったが、LGR4にはWnt/βカテニンシグナルを促進させる作用もあることから、R-spondinなど、LGR4に関与する他のリガンドでの検討も今後必要であると考えられた。
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