研究課題/領域番号 |
20K09389
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 一寛 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (70467661)
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研究分担者 |
篠山 隆司 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (10379399)
中溝 聡 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (00569238)
篠原 正和 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (80437483)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一炭素代謝 / グルタミン飢餓 / グリオーマ |
研究実績の概要 |
悪性グリオーマの腫瘍内環境は一様でなく、特に中心部は低酸素・低栄養状態に曝されており、グリオーマ細胞の増殖停止や細胞死の原因になるが、一部の細胞は代謝的順応・適応に成功し、その変化は更なる悪性化プロセスの転機になると考えられる。本研究は悪性グリオーマの腫瘍内代謝環境が不均一であることに着目し、腫瘍細胞が栄養飢餓状態(グルタミン飢餓状態)に適合していくメカニズムを明らかにすることである。 グリオーマ患者の術前MRスペクトロスコピー検査からLC-modelを用いて種々の代謝物を解析した。腫瘍の内部では辺縁に比べてグルタミン・グルタミン酸の濃度が低く、低栄養状態が示唆された。手術で得られた腫瘍組織を用いたガスクロマトグラフィー/質量分析計によるメタボローム解析では、腫瘍の内部では辺縁より著明にセリンやグリシン、メチオニンなどいくつかのアミノ酸濃度の上昇を認めた。グリオーマ培養細胞を用いた実験でもグルタミン不含培地で同様の結果を得たため、これらの結果からグルタミン飢餓状態を代償するグリオーマの細胞内代謝機構が働いていると想定された。 特にセリン合成や一炭素代謝に注目して、その関連する代謝遺伝子の発現解析をリアルタイムPCR法で行い、セリン合成に関する代謝関連遺伝子Phosphoserine aminotransferase 1 (PSAT1)、葉酸・一炭素代謝関連遺伝子Serine hydroxymethyl transferase 2 (SHMT12), Methylenetetrahydrofolate dehydrogenase 1L/2 (MTHFD1L/2)の発現上昇を確認した。グリオーマ腫瘍検体でもWestern blotによる蛋白発現を解析し、腫瘍では正常脳組織よりSHMT2やMTHFD2の発現が高いことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に大きな実験計画の変更なく遂行されている。グリオーマ患者から得られるMRSデータや腫瘍検体の解析は臨床現場にも影響されるため、培養細胞だけでなく患者由来のglioma stem-like sphere cellsを樹立して研究に応用することを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は遺伝子操作によるMTHFD2発現抑制や発現過剰を行い、グルタミン飢餓状態のグリオーマ細胞に及ぼす影響を機能解析する予定である。また、セリン合成の機序について、13Cを含む炭素源(グルコース)を用いて細胞内代謝物の流れについて質量分析計を用いて代謝Flux解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
質量分析計を用いた代謝物解析について条件設定の調整、検討が必要であり、解析対象となるグリオーマ患者から得られた腫瘍検体を準備しているが、全ての解析には至っていない。翌年度にむけて順次解析を進めるため、前年度からの繰越金を含めた高額の研究資金を要する見込みである。
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