研究課題
悪性グリオーマの腫瘍内環境は一様でなく、特に中心部は低酸素・低栄養状態に曝されており、グリオーマ細胞の増殖停止や細胞死の原因になるが、一部の細胞は代謝的順応・適応に成功し、その変化は更なる悪性化プロセスの転機になると考えられる。本研究は悪性グリオーマの腫瘍内代謝環境が不均一であることに着目し、腫瘍細胞が栄養飢餓状態(グルタミン飢餓状態)に適合していくメカニズムを明らかにすることである。グリオーマ患者の術前MRスペクトロスコピー検査のLC-modelによるデータ解析やグリオーマ手術検体(組織)およびグリオーマ培養細胞を用いたガスクロマトグラフィー/質量分析計によるメタボローム解析によって、グルタミン飢餓状態を代償するグリオーマの細胞内代謝機構にセリン合成や一炭素代謝が関与することを確認した。セリン合成の機序については、代謝Flux解析によってグルタミン飢餓によるオートファジーが強く影響することを見出した。グルタミン飢餓状態でのグリオーマ細胞内には電子顕微鏡解析でオートファジーによって多数の小胞(vesicle)形成を認め、蛍光免疫染色法やWestern blotによる解析でミトコンドリア内のMethylenetetrahydrofolate dehydrogenase 2 (MTHFD2)の発現が上昇していることを確認した。また、オートファジー阻害剤であるクロロキン(CQ)を用いた実験系では、セリン合成が抑制されてグルタミン飢餓状態を代償できずに細胞死が誘導されることを確認した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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