研究課題
いったん損傷された神経は、二度と再生されないとされてきた。しかし、成体であっても海馬歯状回や脳室下帯に神経幹細胞が存在していることが報告されて以来、様々な再生医療アプローチを用いて、内因性の神経幹細胞の活性化をはかり、神経系に元来備わる自己修復能を効率的に誘導しようとする研究が行われている。再生医療アプローチとしては、神経幹細胞移植に代表される神経幹細胞を追加補充する方法と、内因性の神経幹細胞の活性化をはかる治療の2つに大別される。我々がこれまで研究してきた電気刺激療法は、動物実験レベルで内因性の神経幹細胞の活性化を通して、神経系に元来備わる自己修復能の効率的な活性化をもたらすことを確認している。一方で電気刺激療法というものは、すでにパーキンソン病に対する深部刺激療法の形で日常診療において実施されているが、その侵襲性というものが問題となる。本研究では動物実験を通して臨床へのfeedbackを図ることを目的としている。パーキンソン病に対する電気刺激療法の低侵襲化という観点から、パーキンソン病モデル動物に対して迷走神経刺激を様々な刺激強度で与えた。すると、軽度の刺激強度で迷走神経刺激を与えた群において、電気刺激による自己修復機構として抗炎症作用を通した神経保護作用が存在することが確認された。さらに迷走神経の求心性線維あるいは遠心性線維のどちらが重要か、選択的な連続電気刺激によって治療効果を比較検討したところ、求心性線維の重要性が確認され、論文掲載された。別途、微小環境の改善による自己修復脳活性化の観点で論文をreviewする形で水頭症の新規治療に関する仮説論文を作成し投稿、採択された。
2: おおむね順調に進展している
ラット・パーキンソン病モデルにおいて、選択的迷走神経求心性刺激は、神経保護効果を持つこと、具体的には選択的迷走神経求心性刺激黒質線条体ドーパミンニューロンの消失を予防したが、一方で、選択的迷走神経遠心性刺激は治療効果を示さなかった。この内容が論文掲載となった。また、代表者異動に伴う電気刺激装置の新規購入設置のための研究予算が不足しており、脳梗塞モデルに対する電気刺激実験そのものの継続は断念し、代わりに微小環境の改善による自己修復脳活性化の観点で論文をreviewする形で水頭症の新規治療に関する仮説論文を作成・投稿し、採択されたから。
今年度も、微小環境の改善による自己修復脳活性化の観点でreview論文の作成を行う方針である。
論文投稿費が比較的安価にすんだため、残金を用いた新規論文作成を予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Brain Stimulation
巻: 16(2) ページ: 594-603
10.1016/j.brs.2023.03.003
Frontiers in Neurology
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