研究課題/領域番号 |
20K09394
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
中川 慎介 福岡大学, 薬学部, 助教 (10404211)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血液脳関門 / SHRSP / SHR / ペリサイト / 脳血管障害 |
研究実績の概要 |
脳血管障害の発症機序や治療方法の糸口を探ることを目的に、脳血管障害モデルラットを用いて検討を行った。脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP/Izm)と正常血圧ラット(WKY/Izm)から血液脳関門(BBB)を構成する脳毛細血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイトを単離培養し、in vitroで再構成することでBBBモデルを作製した。作成したBBBモデルを用いて、経内皮電気抵抗や低分子トレーサーの透過性を用いて機能評価を行ったところ、SHRSP由来の細胞を用いたBBBモデルでは、WKY由来のBBBモデルに比べ、バリアー機能が低下していることが判明した。 BBBは脳毛細血管内皮細胞と周囲の細胞(ペリサイト,アストロサイト)との相互作用によって構築・維持されている。そこで、SHRSPにおけるBBB機能低下にペリサイトが関与するかを検討するために、WKY、SHRSPおよび高血圧ラット(SHR/Izm)由来のペリサイトを用いて、その遺伝子発現を検討した。SHRSPとSHR由来のペリサイトでは、RGS-4, RGS-5, PAI-1の遺伝子発現がWKYよりも亢進していた。RGSタンパクは細胞膜受容体刺激によるシグナル伝達を制御する機能を持っている。そこで、ノルアドレナリン刺激による細胞内のCa濃度の変化を、各系統から単離培養したペリサイトで検討した。SHRSPやSHR由来のペリサイトでは、WKY由来のペリサイトに比べ、ノルアドレナリンによる細胞内Ca濃度の上昇が低下していることが判明した。SHRSPやSHRでは、アゴニストによる反応性が変化している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SHRSPとWKYからBBBを構成する3種類の細胞(脳毛細血管内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト)を単離培養し、in vitroのBBBモデル作製に成功した。作製したin vitro BBBモデルの機能解析を行ったところ、SHRSP由来のBBBモデルでは、WKY由来のBBBモデルに比べ、バリアー機能が低下していることを発見した。また、SHRSPのBBB機能低下には、3種細胞間のクロストーク異常が関与していることが示唆された。 SHRSP、SHR、WKY由来ペリサイトを用いた比較検討により、発現が異なる複数の遺伝子を見出した。また、SHRSPやSHR由来のペリサイトでは、受容体刺激による反応性がWKYとは異なる可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様、3系統由来のBBB構成細胞を用いた評価を継続する。 今年度の検討により、SHRSPのペリサイトでは、アドレナリン刺激による反応性が変化している可能性が判明したため、その他のリガンド(GPCRアゴニスト(神経伝達物質,プロスタノイドなど)や,培養上清など)を用いた検討を行う。また、その他のペリサイトの機能として,GPCRアゴニストや培養上清で刺激した後の,貪食能や遊走能,基底膜成分の発現・分泌を評価する。 SHRSP由来ペリサイトの機能異常を網羅的に解析するために、マイクロアレイを用いた3種系統由来ペリサイトの遺伝子発現比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により実験が行えない時期が生じた。また、参加予定の学会がオンライン開催となったため旅費の支出がなくなった。これらの理由により、次年度使用が生じた。繰越した費用は少額のため、次年度の物品費として使用する予定である。
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