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2020 年度 実施状況報告書

ミトコンドリア機能に着目した膠芽腫におけるHDAC7の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K09395
研究機関鹿児島大学

研究代表者

吉本 幸司  鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70444784)

研究分担者 比嘉 那優大  鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (90792200)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードglioma / HDAC7
研究実績の概要

生体内の遺伝子発現は、ヒストンのepigeneticな修飾により制御されている。その中でもヒストンのアセチル化は代表的なクロマチン修飾の一つである。ヒストンがアセチル化されると転写因子等が結合しやすくなり転写が促進される。逆に脱アセチル化されると転写が抑制される。これらの過程を制御するのがそれぞれ、ヒストンアセチル化酵素(HAT: histone acetyltransferase)とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC: histone deacetylase)である。これまでの研究成果により、HDAC7の発現が膠芽腫の悪性形質獲得に関与していることを見い出したことから、HDAC7はヒストンのアセチル化を制御するのみならず、核移行シグナルを有するため核と細胞質の間を移動することによって膠芽腫の悪性形質獲得に関与しているのではないかとの仮説のもとに研究を行っている。
これまで神経膠腫におけるHDAC7の発現局在については分かっていなかったが、これまでの研究結果から、正常脳組織と低悪性度神経膠腫ではHDAC7は核に発現されているが、悪性である膠芽腫では、核と細胞質の両方に発現していることが分かった。また、当科でこれまで独自に樹立したグリオーマ幹細胞様細胞2株(KNS1435, KNS1451)にHDAC7を強発現させた細胞(KNS1435-HDAC7, KNS1451-HDAC7)を作成し、核と細胞質分画でHDAC7発現の局在を解析した。その結果KNS1435, KNS1451-HDAC7 O/E細胞では、細胞質分画でもHDAC7の発現を認め、HDAC7が細胞質に移行していることを示唆する結果であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

脳腫瘍臨床検体の免疫組織化学染色で、gradeⅡの脳腫瘍であるびまん性神経膠腫(Diffuse glioma)では核のみに、gradeⅣの脳腫瘍である膠芽腫(Glioblastoma)では核とさらに細胞質にも染色されていた結果より、脳腫瘍においてHDAC7はまず核での発現量が高くなり、さらに悪性度が高くなるにつれて細胞質でも過剰発現することが考えられた。
また培養細胞を用いた蛍光染色や、蛋白分画ごとのウエスタンブロッティングの結果からも、HDAC7は細胞質にも局在することが確認できた。
さらにHDAC7を高発現するグリオーマ幹細胞様細胞を用いて、HDAC7の特異抗体を用いて免疫沈降を行い、回収した蛋白を質量分析することによって結合している蛋白の同定を行った。質量分析は受託で行い、LC-MS/MS分析による結合蛋白の同定を行った結果いくつかの蛋白が同定された。

今後の研究の推進方策

今回質量分析に使用した膠芽腫幹細胞様細胞株すべてにおいて、ミトコンドリア代謝酵素の一種であるニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼ(NNT) 30がHDAC7関連タンパク質としてスクリーニングされた。膠芽腫由来の4つの細胞株で共通してスクリーニングされたことを踏まえて、NNTは膠芽腫で発現、すなわち細胞質でも発現しているHDAC7と深く関連のあるタンパク質と推測し、対象をこの一つに絞って研究を進める。これまでの研究で膠芽腫幹細胞様細胞であるKNS1435と KNS1451の両細胞株において、HDAC7をタンパク質レベルでノックダウンすると、HDAC7の発現と反比例(逆相関)してNNTの発現量は上がっており、NNTの機能はHDAC7の発現に依存している可能性があることが示唆されている。

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公開日: 2021-12-27  

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