研究実績の概要 |
HDACは、ヒストンの脱アセチル化を調節するヒストン修飾遺伝子であるため、核内で機能を及ぼすと考えられている。これまでの研究結果からHDACの中でもclass IIに属するHDAC7が、神経膠腫の悪性化と相関していた。また、臨床検体の解析では、腫瘍の悪性化につれて、細胞質での発現が多くなる傾向が認められた。本研究は、膠芽腫の悪性化形質の獲得に関与していると想定しているHDAC7発現の機能的意義を明らかにすることである。これまでの研究結果から、腫瘍の悪性化に従って、HDAC7の一部が核から細胞質に移行することで腫瘍細胞の悪性化に関与している可能性を示唆する結果が得られた。本研究の立案当初は、HDAC7は細胞質での局在はミトコンドリアに一致していると考えていた。しかし、本年度の研究結果ではHDAC7は細胞質には局在するものの、ミトコンドリアには存在しないことが分かった。また、グリオーマ幹細胞様細胞2株(KNS1451,KNS1435)にHDAC7を強制発現させた細胞(O/E)を用いて、HDAC7と相関する蛋白を解析したところ、解糖系を制御する蛋白が同定できた。実際に、U251細胞を用いて、HDAC7を抑制した細胞では、glucoseの取り込みが低下することが確認できた。したがって、HDAC7は、細胞質での解糖系に関わる酵素をregulationすることによって腫瘍細胞の悪性化に関与しているといえる。
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