研究課題
悪性グリオーマの膠芽腫は国内患者数が2,200人、国外患者数が3.19/10万人の希少疾患である。膠芽腫における標準療法の放射線治療と上市品のテモゾロミドの併用で2年生存率は27%と低く、有効性は十分ではない。グリオーマの予後はここ数十年目立った生存期間の延長効果がある治療法が開発されておらず、根治療法の確立にはさらなる病態解明が必要である。最近、がんの再発や転移の原因として、がん幹細胞の存在が注目されている。グリオーマは強い浸潤能がある。そのため、腫瘍細胞は脳の正常部位に深く染み渡り、外科手術では摘出できない。さらに化学療法と放射線治療の集学的治療を行っても、治療抵抗性をもつがん幹細胞が増殖をくりかえす。再発の根源であるがん幹細胞をターゲットとした治療法は有効であると考えられるが、特異性の高いバイオマーカーや浸潤にかかわる原因遺伝子は不明のままである。我々は、手術で切除されたグリオーマから、がん幹細胞を樹立した。そして免疫組織化学法を用いて、KCNJ分子がコードするタンパク質はがん幹細胞の細胞膜に分布することを見いだした。以上の成果を踏まえて本研究は、グリオーマの病理組織標本におけるKCNJがコードするタンパク質の発現を評価した。検証したKCNJのサブファミリーのうち2分子がコードするタンパク質が、がん細胞の細胞膜に分布していた(3症例)。これらのタンパク質は、グリオーマのバイオマーカーに応用できる可能性が示唆された。
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