研究実績の概要 |
発育性股関節形成不全(developmental dysplasia of the hip: DDH)は日本人に好発する家族集積性の高い疾患である。また本邦では変形性股関節症の約80%はDDHを原因としている。変形性股関節症に対する人工股関節置換術は年間約10万件となり、増加傾向である。変形性股関節症の予防のためにDDHの病態解明は必須であるが、DDHの原因遺伝子は未解明である。当施設では日本人ゲノム解析ツールであるジャポニカアレイを開発している。日本人に最適化されたジャポニカアレイを用いたDDHの原因遺伝子を解明することが目的である。ジャポニカアレイを用いて日本人に特異的な約66万箇所のSNPの中で、DDH発症と相関するSNPを有する遺伝子群を解析する。また、約30億塩基の全ゲノム構造をインピュテーションすることでDDH疾患感受性遺伝子の網羅的な探索を行う。日本人DDH患者238名と健常者2044名を対象に実施した。GWASは、3315人のDDH症例と74,038人の対照をマッチングしたUK Biobankのデータでも実施した。DDH発症に関連する遺伝子とトランスクリプトームの両方についてマイクロアレイ解析(GSEA)を行った。 我々は日本とイギリスのGWASからそれぞれ42、81の遺伝子にDDH関連候補遺伝子があることを確認した。フェロプトーシスシグナル伝達経路がDDHの発症メカニズムに関連している可能性があることが分かった。
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